【富士薬品】お客様に元気を届けるためには、まず社員を元気に

「とどけ、元気。つづけ、元気。」のスローガンのもと、配置薬の販売、医薬品の開発製造、ドラッグストア・調剤薬局の展開など、人々の元気な毎日を支え続ける事業を展開する企業が「まず自分たちが元気に働いていなければ」と健康経営に取り組んでいます。

富士薬品の健康経営チームメンバー

執行役員 人事部長 森島將人さん

お客様の元気な日々をサポートするためには、まずは自分たちが元気であり続ける必要があります。従業員の健康課題と今後の会社の方針を結び付け富士薬品ならではの健康経営を推進していきます。

人事部ダイバーシティ推進課 坪田舞さん

私たちダイバーシティ推進課は、どうしたら、社員の皆がいきいきと幸せを感じながら働くことができるのかを考え、その仕組みづくりをしています。

人事部ダイバーシティ推進課 鎌田梨菜さん

会社が健康経営を標榜するために「これをやりなさい」と言うのは違うと思うんです。私たちは皆が自分から関心を持ち、積極的に健康づくりに取り組んでもらえるように仕向けていきたいと考えています。

富士薬品はこんな会社!

医薬品分野で研究開発から製造、販売まで一気通貫しているのは、国内では富士薬品のほかにありません。新薬開発では痛風・高尿酸血症治療薬の「トピロリック® 錠」「ユリス® 錠」が有名。製造では医療用医薬品・OTC 医薬品・健康食品まで幅広く、販売は配置薬と「セイムス」などのドラッグストア展開が軸。事業部が違うと仕事内容は大きく異なりますが、薬剤師資格を持った人がバックオフィスを経験するなど、ひとつの会社のなかでキャリアを深めることも、広げることもできそうです。

社員が元気でないと顧客の元気もサポートできない

みなさんの家には「配置薬」はありますでしょうか?救急箱に各種医薬品が揃えてあり、定期的に営業員が訪れ、使った分だけを支払うシステムです。実はこれ330年以上も前に富山で発祥したスタイルで、今も各家庭の安心を支えています。最近は身近にドラッグストアや調剤薬局が増え「配置薬」を常備しない家庭も増えましたが、いずれにせよ医薬品というのは“必要なときに、必要なものがあり、安心して使えること”が大切です。

富士薬品はまさにこの“必要なときに、必要な医薬品を、必要な人に届ける”ことを使命としている会社です。1930年に配置薬販売業の創業からスタートして以来、北海道から沖縄まで全国285拠点に営業網を広げ、国内トップシェアを誇ります。他方「セイムス」などのドラッグストアを1360店舗も展開、こちらも国内10傑に入る売上高があります。さまざまな販売チャネルを通じて人々の元気な毎日を支え続けているのです。

そんな富士薬品が健康経営の取り組みを始めたのは2019年。企業ブランディングの見直しに着手したことがきっかけでした。会社が追求すべきは何かを見つめ直すなかで、人事部の森島部長は、「私たちは人々の元気な毎日を支えるために製品をつくり、お届けしている会社だ。お客様の元気な日々をサポートするには、まず自分たちがいつも元気であり続けなければならない」との考えに至りました。同年4月、社内外に「健康経営宣言」を行い、取り組みをスタートさせたのです。

とはいえ、全国に事業拠点があり、社員数5000名超が所属する大企業。働く場所がバラバラなら職種もさまざま。配置薬の営業員から、ドラッグストアの店員、医薬品開発の研究員、医薬品製造工場のスタッフ、調剤薬局で働く薬剤師や医療事務員、医療関係者を訪問し情報提供・収集するMR(医療情報担当者)、本社・本部で働く社員など、職場や役割に応じて、さまざまな働き方が混在する会社です。グループの全社員が同じように課題に取り組むことが容易でないことは、想像に難くありません。

そんな困難なミッションに取り組んだのが、ダイバーシティ推進課の坪田さんと鎌田さんの2人でした。社長を統括責任者、企画管理本部長を推進責任者とする「健康経営推進プロジェクト」が組織され、人事部ダイバーシティ推進課はその下で“実行本部”的な役割を担います。7つの事業部門(配置事業本部、ドラッグストア事業本部、生産事業本部、医薬事業本部、信頼性保証本部、総合研究所、企画管理本部)から1人ずつ推進メンバーが選出され、定期的に会合を持っています。

健康経営推進プロジェクトメンバーとのミーティングの様子。事業拠点が日本全国にあるため、離れた事業所にいるメンバーとはオンラインを利用してミーティングをしている。

「健康経営の趣旨や目指すところを理解してもらい、推進メンバーを通じて各事業部門に発信してもらいます。どうすれば最も効果的に伝わるか、響きやすいかは、各職場の実情を知っている推進メンバーのみなさんですから。逆に各職場の課題や施策に対する意見を吸い上げてもらい、PDCAを回しています」(鎌田さん)

「ダイバーシティ推進課は保健師さんや産業医さんとも連携し、施策について相談したりアドバイスをもらったりしています。その甲斐あって健康経営に関する社内認知度は85%、ストレスチェックと意識調査の参加率は95%に達しています。定期健康診断でも複数の項目で全社的な改善が見られ、保健師さんに褒められました」(坪田さん)

こうした取り組みが評価され、富士薬品は2020年・2021年と2年連続で「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に認定されています。

「元気」をキーワードに社内の一体感が生まれた

まず、同社が改善すべき課題として「生産性の向上」がありました。体調不良を我慢して仕事をしたり(プレゼンティーズム)、病欠・病気休業している(アブセンティーズム)人が一定数いたのです。そこで従業員に「歩くこと」を心がけてもらうことで、健康づくりと生活習慣改善の第一歩にしてもらおうとしたのです。

ただ、会社側から通達で「健康のため歩きましょう」と促しても、なかなかモチベーションに火をつけることはできません。そこで同社はユニオンと共同で「コバトンマイレージウォーキングイベント」を開催することにしたのです。参加者がスマホに専用アプリ「コバトン健康マイレージ」を入れて持ち歩くと歩数がカウントされ、個人および部署別のランキングが更新されます。この専用アプリに登録する名前はニックネームなので、共有スペースに順位を張り出すと「週末一気に歩数を増やして上位に躍り出たこれは誰だろう!?」などと話題になり、大いに盛り上がりました。

「当社は社員数が多いので部署が違うとまるで接点のない人も多いのですが、このイベントを通じて部署を越えた交流が生まれ、全社一丸となってひとつのことに取り組む一体感が醸成できました」(坪田さん)

「社内で“ウチは健康経営に取り組んでいる会社なんだ”という意識づけには大いに効果がありました。健康管理上の効果もヘルスケアレポートに表れ、保健師さんには“目に見えて改善がありますね”とお褒めの言葉をいただきました」(鎌田さん)

もちろん、この“目に見えた改善”はウォーキングだけで達成されたのではありません。ほかにもイベントやセミナーで健康意識の向上を図ったり、ストレスチェック(年1回)や意識調査(年2回)の結果をデータで見える化してフィードバックし、それぞれの部署で改善策を講じてもらうなど、PDCAを地道に回してきた成果でもあります。

健康経営の取り組みが業績向上に結びついたかは(この2年がコロナ禍だったこともあり)明確な数値で語るにはまだ早いかもしれませんが、取材ではこんなエピソードも聞きました。ある営業員が取引先企業に出向いたところ「富士薬品は健康経営を宣言されてますね。具体的にどんなことをやっていますか? ウチも始めたいが何から手をつけたらいいですか?」と相談を受けたというのです。名刺に“健康経営優良法人”のロゴがあっても、目の前の人が元気でいきいきしていなければ、こんな相談は受けません。

人々の元気をサポートする会社として医薬品を届けるだけでなく、健康経営の素晴らしさを実体験として語り広められれば、これほどの説得力はないでしょう。

ほかにも、「座りっぱなしは体によくない」ということで、伸縮するデスクも本社内に設置している。立って仕事をすれば効率もアップするかも!?

元気で幸せに働き続けることが社会のためになる

これから富士薬品の健康経営は、どのように進化していくのでしょうか?

目に見える目標として同社が目指しているのは、健康経営優良法人「ホワイト500」の取得です。この認定企業になるということは、健康経営で日本の上位20%に入ることと同義です。しかも、2022年以降は条件が一段と厳しくなって、早々に取得を諦めた企業もあるとか。

「チャレンジングな目標ですが、お客様に元気をお届けできる会社として、まずは社員が元気で働き続けられる会社であることを証明したい。『ホワイト500』はそれを内外に示せるわかりやすいタイトルだと思います」(鎌田さん)

「元気とは“病気じゃないこと”ではありません。私たちの考える元気とは、いきいき、幸せに働き、自身のパフォーマンスを最大化できる状態。それを実現するには職場の風通しのよさ、長く安心して働き続けられる制度、女性の活躍推進、ストレスを感じている人への丁寧なフォローなど、やるべきことはたくさんあります。いろんな引き出しをつくっていきたいです」(坪田さん)

コロナ禍でテレワークが増えたこともあり、世間では生活のリズムを崩しコロナ太りやコロナ鬱など、健康上の問題を抱える人も増えました。職場に集うことで可能だった健康意識の喚起や一体感の醸成もハードルが上がりましたが、ITツールやSNSの活用で乗り切り、さらにピンチをチャンスに変える工夫を凝らしているとのことでした。

「すべては社員の幸せのために――」。社員が元気でいるからこそ、よい仕事ができる。よい仕事ができるからこそ、人生が充実する。人生が充実すれば、人々に元気が行き渡り、会社の業績もアップする。この幸福の好循環こそが健康経営の強みであり、理想です。人を大切にする企業は、社会にとってなくてはならない存在になり、さらなる成長が続いていきます。富士薬品の健康経営の取り組みには、その可能性を感じました。

企業名:株式会社富士薬品
創業:1930年2月
事業内容:医薬品等の配置薬販売事業、薬局販売等、製造
売上高:3,899億9963万円(2021年3月期)
従業員:5,006名(2021年3月末現在)
本社:埼玉県さいたま市大宮区桜木町4丁目383番地
東京本部:東京都千代田区神田錦町2丁目2番地1 KANDA SQUARE 9F
電話番号:048-644-3240
URL: https://www.fujiyakuhin.co.jp/

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