大同特殊鋼は、「健康経営銘柄2021」に認定された健康経営企業のトップランナーと呼べる存在です。健康・衛生面を担う独立部署「ヘルス改革室」の手がけるさまざまな施策が奏功し、従業員一人ひとりが主体性を持って健康意識を高めることに成功しました。
大同特殊鋼の「健康経営」のここがスゴイ!
安全健康推進部の2名にお話をうかがいました。
安全健康推進部長 内藤幸宏さん
職場の主体性を尊重しつつ、従業員の健康増進を進めていく
健康に関わる活動は言われたからやるのではなく、職場・個人の納得感・自主性が一番大切だと考えています。そして、職場・個人の健康意識向上は、仕事のパフォーマンスを高めたり、就業中の安全確保にもつながっていきます。
安全健康推進部 加藤嵩士さん
コミュニケーションを通じ、健康増進への意識と熱量を共有
健康経営に対する熱量は、従業員一人ひとり、あるいは事業場単位で大きな差があります。意識を共有するため、チームリーダーのみなさんとコミュニケーションを取り、活動方針を理解していただけるよう努めています。
創業100年超。失敗をおそれず挑戦する姿がここにはある
世界最大規模の特殊鋼専業メーカー。多様なニーズに応じる形で技術開発を行い、自動車、航空機、船舶、情報機器といった分野に素材を提供。目に見えないところで人々の暮らしと社会の発展を支えています。社風としては、何かに失敗しても挑戦する姿勢や努力そのものを評価するのが特徴。能力を磨きたいと思っている人を全力でバックアップしています。
ヘルス改革室が専従部門であるからこそ、社員の健康管理に注力できる
――健康は急務ではない。だからこそ一日一日の積み上げが大事。
2016年に「健康経営宣言」を表明。4年連続で「ホワイト500」企業に
特殊鋼事業を基軸とし、ものづくり産業分野のイノベーションの創出に貢献している大同特殊鋼。同社では、2006年より安全推進部が主体となって健康経営を推進。
2014年になると、安全推進部から安全健康推進部に名称を変更し、その動きをさらに加速させてきました。
ヘルス改革室は、安全健康推進部の中の健康衛生面に特化したチームで、各事業場の課題を吸い上げて全社的な方針を示しています。
ヘルス改革室が専従部門として存在していることについて、安全健康推進部長の内藤幸宏さんは「当社が、従業員の健康を重んじている象徴と言えます。健康経営の推進にあたり、担当部門が掛け持ちでは、健康が後回しにされてしまいます。専任として集中できるのは大きなメリットです」と、コメント。
ヘルス改革室に所属する加藤嵩士さんは「社会的に健康経営が注目されるなか、専従部門として注力できることは、対外的なアピールにもなっていると思います」と、語ってくれました。
その後、健康行動目標として4つの柱(感染予防・疾病予防、フィジカル、メンタル、受動喫煙防止対策)を定めて推進した結果、4年連続で「健康経営優良法人ホワイト500」に、2021年は健康経営銘柄に認定されました。
全社方針に沿った事業場独自の活動を推進
このような結果を出すまでに、ヘルス改革室が中心となって、健康にまつわる全社的な環境整備を行ってきました。ただし、事業場によって環境や事情が異なるため、健康にまつわる取り組みもそれぞれ少しずつ差異があります。
「全社的な方針に沿いながらも、各所において運動や食事、禁煙・卒煙に関する独自の取り組みが行われているのが特徴です」(加藤さん)
一口に健康経営といっても、その課題は事業場ごとに異なります。各事業場の担当者が現状を正確に把握し、試行錯誤を繰り返してきたことが目標達成に寄与しています。
従業員の健康を気遣う取り組みが充実
――強制するのは簡単。でも納得したうえで、行動に移してもらわないと意味がない。いかに自主的に取り組んでもらうかを大切にしています。
産業保健のスペシャリストを配置し面談・相談に注力
健康経営にまつわる取り組みを行うにあたり、大きく貢献しているのが産業医、保健師、ヘルスキーパーの存在です。産業医は非常勤含め8名、保健師は12名、ヘルスキーパーは5名在籍しており、それぞれの持ち場で活躍しています。
産業医は、従業員との面談や診療をメインに、衛生委員会への出席、事業場の巡視、法律対応などの役割も果たしています。保健師は従業員にとって産業医よりも身近な存在で、随時相談を受けるほか、現場のニーズに応じた教育も担当しています。ヘルスキーパーは、国家資格をもっている鍼灸師のことで、従業員は予約制で鍼灸治療を受けることが可能です。
「社員と密接に関わっている保健師が、現場のニーズに応える形でたびたび教育を行っています。またメンタルヘルスなどに関わる相談にも親身になって応じています」(加藤さん)
従業員の健康には、毎日の食事への配慮も重要です。食堂のある事業場では、生活習慣病の予防を目的に、一日に必要な野菜摂取量350gのうちの3分の1を取れるヘルシーメニューを毎日提供。栄養バランスの優れた食事をとることができます。一方、食堂のない事業場では、定期的に野菜を配るなど、健康的な食生活をサポートしています。
また、近年一層力を入れているのが禁煙・卒煙チャレンジです。各事業場において、禁煙タイム、禁煙デー、全面禁煙が導入されるほか、分煙環境の整備、保健師の卒煙サポートなどが行われています。
禁煙・卒煙への取り組みにおいて、成功例として注目したいのが星崎工場です。こちらでは、2021年より定時時間内禁煙を導入。一年間の猶予を設けたおかげで従業員も心の準備ができ、全員が納得のうえでスムーズに禁煙を受け入れることができたそうです。
「以前の星崎工場は、禁煙・卒煙に向けての意識が高かったわけではありませんでした。ですが、コミュニケーションを重ねることにより、安全チームリーダー(工場の安全・健康の責任者)が全社方針を理解・納得し、積極的な活動を展開してくれるに至りました」(加藤さん)
星崎工場における卒煙チャレンジの成功は、大同特殊鋼にとって大きな成果でした。内藤さんは「星崎工場の施策と実績を参考に、他事業場へ展開していきます」と、語ってくれました。
人にやさしい会社でありたい
――2021年の健康経営銘柄取得を機に、社員の幸せのためにさらにステップアップしていきたい
個人の意思を重視するスタイル
例えば、禁煙・卒煙を進めていくにしても、従業員の自主性を重んじるのが大同特殊鋼のやり方です。
「分煙は法律で決まったことですが、禁煙・卒煙は個人の健康面の話であり、強制して解決するものではありません。一番望ましいのは、従業員一人ひとりに喫煙リスクを理解してもらい、納得のうえで禁煙・卒煙にチャレンジしてもらうことです。もしかしたら一方的に禁煙を押し付けた方が会社としては短期的に成果が上がるかもしれませんが、やはり自主性を重んじる価値観は大切にしたいと考えています」(内藤さん)
個々人の嗜好性や価値観を尊重しつつ健康経営に取り組む姿勢からは、人にやさしい社風が伝わってきました。
また、今後クリアしていきたい課題を質問すると、内藤さんは「メンタルヘルス対策です」と、即答しました。
「産業医や保健師が相談に乗ることはもちろん、普段から身近にいる上長が部下の様子に気を配り、体調を気遣っていくことが大切だと感じています。そのためにはコミュニケーション不足にならないように、普段から会話を交わす。そんな職場の雰囲気を全社に浸透させていきたいと思っています」(内藤さん)
このような環境下であれば、新たに入社した人も安心して仕事に打ち込めるのではないでしょうか。最後に、大同特殊鋼が求める人物像について伺いました。
「特殊鋼という言葉を耳にしたことのある人は少ないと思いますが、社会のさまざまな場所で使われ、みなさんの暮らしを支えている素材です。社会に貢献することがモチベーションにつながる方々であれば、ぜひとも私たちの仕事を手伝っていただきたいですね」(加藤さん)
健康を維持しつつ社会に寄与する大同特殊鋼のみなさん。個人の主体性を重んじる懐の深さがじつに印象的でした。
創業:1916年 事業内容:特殊鋼鋼材、機能材料・磁性材料、自動車部品・産業機械部品、エンジニアリング、流通・サービス 売上高:4,127億2,200万円(連結) 2,455億400万円(単独)(2020年度) 事業場数:国内・海外に20か所 従業員:1万3,109名(連結) 本社:名古屋市東区東桜一丁目1番10号 アーバンネット名古屋ビル 電話番号:052-963-7501(本社) URL: https://www.daido.co.jp/