【神戸マツダ】「5つの幸せ」ですべての人々に感動を与えたい

兵庫県でマツダ車などを扱う自動車ディーラー。販売台数を競いがちな業界にあって売上至上主義を脱却し、お客様、社員と家族、地域、社会・環境、協力者の「5 つの幸せ」を追求する理念経営を実践しています。

神戸マツダの健康経営チームメンバー

神戸マツダはこんな会社!

魂動デザインとSKYACTIV 技術で「走る歓び」を体現するマツダ車や、英国の名門ジャガー・ランドローバーを扱う兵庫県の自動車ディーラー。 新車・中古車販売はもとより車検や点検などの整備事業に力を入れ、自動車部品・用品の販売、レンタカー、損害保険・生命保険業務も手掛け、顧客のカーライフを継続的にサポートできる「総合自動車サービス業」を志向しています。地域企業として地元との結びつきや貢献を大切にしながら、従業員の待遇や長く安心して働ける環境づくりに関しては「全国でもトップレベルでありたい」とする意識の高さを感じる会社です。

神戸マツダが「5つの幸せ」を目指す理由

神戸マツダの創業は1941年9月、太平洋戦争開戦の3カ月前です。戦時中はメーカーの生産ラインが止まったり社員の多くが出征したため、残った社員は整備事業に奮闘し会社を存続させました。戦後、復興需要と高度経済成長の追い風を受けて神戸マツダも急成長、個性的な車を数多く販売しました。メーカーのマツダは1988~1992年に年間販売台数100万台を目指して販売網を急拡大したのですが、この計画はバブル崩壊で頓挫。さらに阪神淡路大震災(1995年)で本社・店舗が全半壊する被害を受けるなど、苦しい時代が続きました。

「私は銀行勤務を経て、1996年に神戸マツダに入りました。会社を立て直すためにグループ10社を1社にまとめ、52あった店舗は26に統廃合、人員削減も行って経営をスリム化する一方、地道に借入金を返済していきました。ですがリーマンショックや東日本大震災などがあると受注がパタリと止まるのです。車を売ることを至上命題としてきた我々はその度に“何のために仕事をしているのだろう?”と思い悩んだのです」(橋本社長)

何のために仕事をするのか―就職活動に励んでいる読者のみなさんも考えるテーマではないでしょうか? 考え抜いた末に橋本社長は「人々を幸せにするための仕事でなければならない」との答えにたどり着き、創業70周年を機に“5つの幸せ(5Happy)”実現に向けた「創新実行の取り組み」を全社の目標に掲げました。

「5つの幸せとはお客様の幸せ、地域の幸せ、社会・環境の幸せ、協力者(パートナー)の幸せ、そして社員とその家族の幸せです。我々は単に“車を売って終わり”のディーラーにはなりたくない。車の販売や修理点検、あるいは地域の奉仕活動も通じて“5つの幸せ”を実現していくのだ、と決意しました」(橋本社長)

「お客様の幸せ」では神戸マツダファンフェスタの開催や、新世代店舗での継続的なイベントやサービス。「地域の幸せ」では、地元のお祭り(生田祭神幸祭)への貢献や兵庫運河の清掃活動。「社会・環境の幸せ」ではエコアクション21認証の取得やユニセフカップ神戸バレンタイン・ラブランへの協賛。「協力者の幸せ」では取引先との連携強化や煩雑な自動車登録業務を削減するためのOSS登録の推進。そして「社員とその家族の幸せ」では、それを実現する手段のひとつとして“健康経営”の取り組みがあります。

例えば、営業部門では契約1台ごとに支給されていた個人奨励金を廃止しました。ディーラーでは昔から当たり前の歩合制ですが、これだと営業員は“車を売ること”を意識しすぎてしまい、アフターフォローや地域貢献活動が疎かになりがちです。また体調を崩すなどで販売成績が落ちると月収も減るので、生活が安定せず「社員とその家族の幸せ」に結びつかないのです。そこで社員が皆で助け合い、お客様をチームで迎える体制をつくりました。

「車を売るために頑張るのではなく、お客様のよりよいカーライフをサポートするためにできることは何かを皆で考えたい。そこで我々は奨励金を廃止して固定給と賞与を上げました。創新実行の取り組みを始めて9年間で2.5万円のベースアップ、賞与は3.3カ月→4.5カ月に増えています」(橋本社長)

さらに同社は2030年までに従業員の換算時給を現在の倍にすることを宣言しています。こうした方針からも神戸マツダが“車を売るだけのディーラー”とは明らかに違っていることがわかるのではないでしょうか。

取材中の橋本社長。神戸マツダは健康経営のみならず、経営をV字回復させた橋本社長の経営手腕にも注目が集まる

健康経営が「社員と家族の幸せ」を実現する

神戸マツダの健康経営への取り組みは、企業理念に「創新」を掲げた2012年にスタートしました。位置づけとしては“5つの幸せ(5Happy)”にある「社員とその家族の幸せ」を実現する手段のひとつであり、始まりは「心・技・体・生活のバランスを大切にしましょう」といった日々の“心がけのススメ”でした。

「私自身にも健康の大切さを痛感する出来事がありました。2013年に突然、左椎骨動脈乖離という(血管の内壁が裂ける)病気になり、2週間入院したのです。それまでバリバリ仕事をしていたのに急に仕事ができなくなって……。どれだけやる気があっても心身が健康でなければ頑張ることもできません」(橋本社長)

2020年からは保健師の小倉さんが入社し、生活習慣病対策・メンタルヘルス対策・喫煙対策・家族の健康増進の4本柱で取り組みが本格化。2018~2021年の4年連続で「健康経営優良法人ホワイト500」の認定取得を受けています。

「私は従業員が10万人を超える大企業から転職してきたのですが、神戸マツダでは“会社から言われたから”やるのではなく、皆が自発的に健康経営に取り組んでいるところがいいなと思います。施策もお仕着せではなく人財共創グループのメンバーと考えているんですよ。私は車のことは部門外ですが、この会社は部署の間の敷居も低く、転職してきてすぐに馴染めました」(小倉さん)

「健康経営をきっかけに、食事や運動など生活習慣に気をつけるようになりました。正直はじめは面倒くさそうな人もいたのですが、一体感のある会社なので自然と皆で取り組むようになって。個人的には健康経営が本格化する前後で、体重が10キロも減ったんです。周囲にも健康的になったと言われますし、仕事もプライベートも充実します。絶対、健康になった方がいいです!」(中島さん)

とはいえ、課題も少なからずあります。自動車販売会社ということもあって車の利用が多く運動不足になりがちなこと、そして喫煙率が思うようには下がっていない(18年度41.5%→20年度38.8%)ことなどです。神戸マツダは2030年に向け“創新”をさらに進化させた10年計画「バリューチェンジャー」を発表しており、そのなかでも「健康管理の徹底」「喫煙率の半減」「ストレスミニマムな職場の実現」を打ち出しています。

社員とその家族が心身ともに健康でいてこそ充実した日々を送れます。日々が充実してこそ、お客様によいサービスが提供でき、地域や社会や取引先ともよい関係が築けます。「5つの幸せ」はそれぞれ別個にあるのではなく、つながっているのです。

喫煙率を半減するため、毎月12日・22日を“スワン(吸わん)デー”と定め、全社で一斉禁煙の日としている

質の高い整備を提供できるディーラーでありたい

将来の自動車業界を考えるとき「自動運転」は大きなトレンドになるでしょうが、マツダはこのトレンドとは一線を画しています。車好きな人には有名ですが、マツダ車の個性はドライバーが意のままに車を操り、移動を楽しむ「人馬一体・走る歓び」にあるからです。その個性を最大限に発揮するために欠かせないのが「質の高い整備」です。

「創業期のエピソードでもお話ししましたが、神戸マツダは“整備”からスタートした会社です。車を売って代金をいただく交換価値ではなく、お客様には常によい状態を維持し、乗っていただくことで所有価値・使用価値を感じていただきたい。なので当社は整備に関わる人たち(サービスエンジニア・サービスアドバイザー・サービスマネジャー)を大切にしますし、高いモチベーションで腕をふるってもらいたいのです」(橋本社長)

今は車もネットで買う方が増えつつありますが、安全・快適に乗り続けるには整備が欠かせず、そこに車種の特性を知り尽くしたディーラーの存在価値がある、という考え方です。では、営業職は将来どうなるのでしょうか?

「営業職は整備とお客様をつなぐ架け橋です。お客様がどんな用途で車を利用し、車がどんな状態にあるのかを、きめ細かくフォローするためにもより重要な役割を担います。また若者の車離れが言われて久しいですが、それは自動車業界が“車があると人生がこんなに楽しくなるんだ”という魅力を提示できていないせいもある。私たちは全社一丸でお客様のライフタイムバリューを大切にしていく会社でありたいと思っています」(橋本社長)

採用は新卒のほか中途で車以外の業界から転職してくる人も増えているとのこと。また県外や海外からの人材も多く活躍しています。地域とのつながりや社会・地球への貢献も考え、自分と家族の健康も気遣いながら長く安心して働けるやりがいのある仕事―神戸マツダの取り組みは地域密着企業におけるひとつのモデルケースであると感じました。

神戸マツダには国家資格を持つ整備士が多数在籍する。自動車整備士の待遇見直しや働き方改革を進めるなど、先進的な取り組みを実施している
株式会社神戸マツダ
創業:1941年
事業内容:1.マツダ車及びジャガー、ランドローバーの新車及び各種中古車の販売 2.自動車の修理及び車検・点検などの整備業務 
     3.自動車部品・用品の販売 4.自動車レンタカー事業 5.損害保険代理業務及び生命保険募集業務ほか
従業員:799名(2021年3月末時点)
店舗数:兵庫県下45店舗(部品センターやレンタカー店舗含む)
本社住所:兵庫県神戸市兵庫区東柳原町3番10号
電話番号:078-671-5011(代表)
URL:http://www.mazda-hgr.co.jp/

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