豊安工業株式会社は、1948年の設立以来、ボイラーやコンプレッサー、ポンプといったプラント設備の高効率化や省コスト化を実現する設計、メンテナンスなどを業務とし、工場稼働の心臓部を守る企業として日本の製造業を支えてきました。今回は、豊安工業の事業内容や福利厚生、教育制度などについて、代表取締役の磯村巌社長に話を伺った。
メーカーからトータルプランナーに、そしてデジタル化へ
当社は知立市を拠点に、お客様の工場にある機械や設備を動かすエネルギー源を供給するプラントシステムの設計や施工、メンテナンスなどを業務としています。
東海三県を中心に多種多様な業務のお客様をサポートしており、お客様のニーズである省エネ、省コストを実現し、環境にも配慮した工場設備の提供を目指しています。
工場は稼働を続けていると、不具合が生じたり、効率が悪くなったりということが起こります。それらをメンテナンスし「マイナスをゼロに」、また、さらに効率が上がるように新しい設備導入を提案することで「ゼロからプラスへ」もっていくことが豊安工業の役割だと考えています。
ボイラーメーカーとして私の祖父によって設立された当社は、メーカーとしてボイラーを納めていく過程で、お客様からボイラー設置に必要なガスや水の配管設備もお願いされることがあり、徐々に工場設備をトータルでサポートするようになっていきました。
そんな中、今では二大ボイラーメーカーとして知られる当時の石川島播磨重工(現在のIHI)と三浦工業から販売店として業務提携の話があり、それを機に製造業から販売・設置やメンテナンスに事業を転換していきました。
この二大ボイラーメーカーの製品を両方取り扱える販売店は稀有な存在で、お客様のご要望や状況によって最適なメーカーを提案できること、そして工場設備をトータルで見れることが豊安工業の強みになり、「豊安さんに相談すればなんとかしてくれるだろう」とお客様に思ってもらえているのが、会社が70年続いている要因の一つだと思っています。
近年、世の中では急速にデジタル化が進んできましたが、私たちの業界ではまだまだ一部の大手がデジタル化に取り組み始めたに過ぎません。
しかし、今後は少子化の影響で必ずデジタル化に動いていくと考えています。ですから、当社でもAI、IoT、クラウドなどのデジタル技術を取り入れ、工場内でデータで管理することでより効率的にお客様が様々なものを製造できるようになるための環境を提案できるように、プロジェクトチームを発足し、取り組んでいます。
人と人とのつながりを大切に
当社が提供するワンストップサービスでは、メンテナンスをする部署、工場のプランニングをする部署、営業する部署などの社内に加えて外部の職人さん、こういった多くの関係者をつないでいくプラットフォームのような役割を私たちが担い、それらを一つにまとめて融合されたものを商品としてお客様に提供しています。
様々な人が関わり合い連携することがサービスの質に影響する重要なことであるため、私たちは人とのつながりをとても大切にしています。
先ほども述べたようにデジタル化が進んでいる今、「人にしかできない仕事は何か」と考えると、人とのつながりや、きちんとコミュニケーションをとることだと思っています。そのためには人として基礎的な能力をしっかり発揮できることが重要になるため、その力を身につけてもらうための人材育成に力を入れています。
社員の多くが参加する研修や行事を多く用意し行うことで、全社員が共通体験を通して、人とのつながりやお互いの理解を深めることができます。
近年は、どちらかというと仕事とプライベートを明確に分ける人も増えて人とのつながりは希薄になってきているように感じます。
また、新型コロナウイルスの影響でリモートワークが推進されるなど、リアルな対面でのコミュニケーションも減少傾向にありますが、私は逆に社員同士のつながり、社内の雰囲気を大切にしたいと思っています。
一人で悩みを抱えて、社内に相談できる相手がいないということにならないように、社員同士で助け合えるような環境をつくって、肩を組んで仲良く足並みを揃えてお客様や仕事と向き合う会社を目指しています。
社会人基礎力を磨き、社員同士の絆を深める教育研修
様々な教育や研修制度を充実させており、これらの教育・研修制度の目的は、社会人基礎力を磨くこと、行事や研修などの共通の体験を経験することで、社員同士のつながりを深めることです。
まず、新入社員研修の「自然庵研修」と「理念塾」の二つを紹介していきたいと思います。
自然庵研修は、新卒の新入社員研修の一つで2年間の寮生活を通じて行われます。1年目の社員は夕食作りなどを通して『行動力』、『計画性』、『コミュニケーション能力』など社会人としての基礎を磨くと同時に、先輩社員との関係構築の場とします。
2年目は1年目の後輩を指導することを通じてサポートをするということを覚えてもらいます。入社して最初の2年間は、寮生活と職場を通じて仕事に慣れて基礎を覚えてもらう期間と位置づけ、部署の壁を越えて、何でも同期や先輩社員に相談できるネットワークを構築してもらえるようにサポートします。
寮生活の間は、業務よりも社会人基礎力を学ぶことが優先で、売上目標などは一切ありません。
理念塾は月1回開催し、社長である私から理念を伝える研修を行っています。
当社の理念は項目が多く、ホームページにある『豊安スピリット』は理念全体の一部で、現在も更新されています。それぞれ言い回しがわかりづらいものなどもあるため、共通理解を深めるために研修ではすべての理念に込められた思いや考え方を伝えています。
対象は寮生活中の入社2年目までの社員です。
特に自然庵研修は今どき珍しい寮生活を取り入れたものですが、この2年間を通じて培われた人間関係は、学生時代の部活の先輩・後輩の関係に近く、それぞれの部署に配属が決まった後も部署を越えたコミュニケーションを生み出し、それがプラットフォームとしての役割を担う当社の業務に活かされています。
続いて紹介するのは、会社全体で行う「3KM夢発表会」と「本物研修」です。
これらは、業務だけの関係ではなくプライベートでも気兼ねなく関わることができる家族のような関係性を構築したい、社員にとって会社が第二の我が家に思ってもらえるような会社にしたいという思いから実践しています。
3KM夢発表会は年1回実施しています。
「3K」とは「個人、家庭、会社」の頭文字で、社員それぞれが個人の夢、家庭の夢、会社での夢を発表し合い、その夢の実現を社員全体でサポートし叶えるという取り組みです。
夢を語り合い、その実現をサポートし合うことで、より深くお互いを知り、協力体制が生まれるようになります。
本物研修は、本物に触れ合うというテーマの、一言で言えば社員旅行です。
ここでも社員間のつながりを深める工夫をしています。会社全体でまとまって行くのは業務上難しいので、ランダムに集まった数名で、目的地が書かれた的にダーツを投げて当たったエリアに行きます。メンバーをランダムにすることで普段関わりが薄い人と関わることができ、同期だけの横のつながりだけでなく先輩・後輩社員などの縦のつながりも築くことができます。
このような行事を通じて社内間の仲を深め、なんでも言い合える家族のような関係性を構築し、これを強みとして業務に活かせるようにしています。
仕事を通じてコミュニティを作りたい
社員全員で楽しみ、社員全員で学びあう、そんな共通体験を通じて、人と人のつながりを構築し、豊安工業で働くことに喜びを感じてもらいたいと考えています。
そして、その喜びによって『豊安工業というコミュニティ』ができていくことが私の想いでもあります。
豊安工業での仕事は『何か決まった商品を売る』のではありません。お客様のご要望に合わせた最適な仕組みやシステムをご提案して選んでいただき、お客様のビジネスをさらなる成功に導くのが仕事です。
少しわかりにくいかもしれませんが、豊安工業という会社が社員を家族のように大切にし、社員たちが楽しみながら働いていることは間違いありません。
そして社長以下社員全員が、豊安工業の『想い』に共感した方と一緒に働ける日を心待ちにしています。
豊安工業株式会社 設立:1948年 事業内容:プラント設備のトータル管理 資本金:3000万円 売上高:34 億 2000万円(2019 年 11 月決算) 従業員:58名(2020 年 4 月現在)※パート含む 本社住所:〒472-0042 愛知県知立市内幸町加藤40番地 電話番号:0566-81-0885 URL:https://www.e-houan.co.jp/