【有限会社モーハウス】子育てママを我がままに子連れ出勤の先駆け企業

  • 設立   2002(平成15)年11月 ※創業1997(平成9)年10月
  • 事業内容 授乳服の製作・販売、授乳服を通した情報発信、そのほか授乳ブラなどマタニティー商品などの製作・販売
  • 資本金  300万円
  • 従業員  正社員・準社員9名、パート・アルバイト40名
  •       ※2019(令和元)年 6月1日時点
  • 本社住所 茨城県つくば市梅園2-17-4
  • 電話番号 029-8 51- 7373
  • URL   https://mo-house.net

日本初の外で使える授乳服で女性みんなが輝ける社会へ

子育てをしているお母さんは「我が子を大事にしなくては」との思いで、我慢して何でも自分でやってしまい、周りの目を気にするあまり外出が億劫になり、孤立してしまうことがある。そんな彼女たちが社会で孤立せず、輝けるようにとの想いで授乳服や授乳ブラなどを製造・販売しているのがモーハウスだ。日本で初めて外でも授乳できる授乳服を開発し、今までの総売上は授乳服が20万枚、授乳ブラは40万枚を突破している。代表取締役の光畑由佳氏に話を聞いた。

創業のきっかけになった満員電車

 20年ほど前、生後1ヶ月の子どもを連れて都内へ行った際、電車の中で子どもが泣き出しました。お腹が空いていることが分かったので授乳させたのですが、周りの人が見ている中での授乳は、肌も見えますし、とても苦しかったのです。騒がしくしてしまったことで周囲の人に申し訳ない気持ち、母親として、子どもにも泣かせてしまってごめんねという気持ちにもなりました。
 ただこの時、社会に謝っているような自分の気持ちに違和感を覚えました。そこで、外にいてもどこでも人目を気にせず授乳できる服があればいいのではないかと考えました。もともと建築に関心があったのですが、「建築は人を守るもの」という視点を掘り下げていくと、お母さんが自分で手に入れられる「建築」として「衣服」に行き着きました。

主力商品は授乳服

授乳の様子

 私たち(モーハウス)の授乳服はわざわざ服を脱いだり、ボタンを外す必要がなく、服を着たまますぐ授乳できるものです。最近は種類も価格帯も様々ですが、当社の授乳服は1秒で授乳ができ、周囲に肌も見えません。赤ちゃんの顔が隠れない設計なので、安心した姿勢で授乳させることができ、周りからも授乳しているようには見えないのが大きな特徴です。機能面だけでなく素材にもこだわっているため原価率は高いですが、それでも、いいものを作って体感してもらい、社会を変えていきたいという想いがあるので、価格設定も利益が出るギリギリのラインに設定しています。
 今では、お客様のニーズや要望に合わせて、授乳ブラやショーツなど、様々な商品を製作・販売するようになり、授乳服を着て、ステージ上で実際に授乳してもらう「授乳ショー」など各種イベントも行うようになりました。

授乳服を着ると景色が一変

 授乳服を作りたいと思ってからは、自宅でまず制作に取り組みました。いくつかデザインを考えては縫って試作しました。大学時代に被服学科で機能的な勉強をしていたのが役に立ったと思います。
 出来上がったものを試着すると、価値観が一変し、驚きました。人前での授乳が楽に行えるだけで、外出する際の不安というマイナス要素がなくなり、ポジティブ思考になったのです。授乳服だけでそんなに?と思われるかもしれませんが、「子どもがいきなり泣き出したらどうしよう」や「授乳している姿を人に見せたくない」といった不安要素を解消するだけで、お母さんたちの行動は変わり、自尊心を取り戻すことができるのです。授乳服を広めることでお母さんが安心して外に出かけられ、社会から孤立しなくなるとも思いました。
 試作品を作るにあたり、機能性やデザイン性を高めるために、海外から授乳服と名の付くものを探して取り寄せたり、友人や専門家にもアイデアをもらいつつ、販売できる商品を作りました。
 早く広めたい気持ちが強く、着想から商品ができるまで2、3ヶ月ほどでした。これが1997年のことです。当初10枚ほど発売したのですが、徐々に共感してくれるお母さんや助産師さんたちが集まって、手伝ってくれるようになりました。地道に商品開発と販売をしていく中で、2002年に8人のスタッフで会社として設立しました。私を含めてスタッフ全員が子育て中だったので、最初からみんな子連れ出勤で仕事に取り組みました。

ターニングポイントとなった青山店

 都市部の方がより閉鎖的で孤立するお母さんが多く、体感してもらえることで良さがわかる商品でもあるので、2005年に青山店をオープンしました。つくばエクスプレスで都内までアクセスしやすくなったことも大きいですね。青山店は国内初となる授乳服専門店です。お店を持つことで活動の幅は広がり、商品販売はもちろん、授乳ショーやイクメン講座といったイベントを行うなど、宣伝活動に大きく貢献することになりました。店舗は利益目的よりも、お母さんたちにもっと授乳服やライフスタイルを知ってほしい想いで運営しています。青山店の後、ショッピングセンターでも子連れ出勤できないかと思い、つくばララガーデンショップもオープンしました。スタッフはほぼ授乳体験者で、子連れ出勤のスタッフも数多くいます。

お母さんが子どもと一緒に働ける場所

子連れ会議

 設立当初から子連れ出勤をしていたので、今でもその方針は変わりません。会社として、働く従業員も販売商品も「お母さんのために」がコンセプトなので、社名の「モー」は「mother」に由来し、「ハウス」の部分は自宅で創業したことからつけました。
 子連れ出勤には、「子どもがいると騒がしいのではないか」や「子どもがかわいそう」と心配される方もいらっしゃいますが、そんなことはありません。確かに、子連れ出勤するとお母さんも子どもも慣れない環境で戸惑い、泣き止まない子どもにどう接すればいいか分からないこともありますが、1週間もあればお互い慣れてスムーズに働けるようになります。子どもも、お母さんといることで安心しますし、何より人見知りしなくなります。新米ママを経験したスタッフが自分も含めて多数いるので、仕事スキルも育児スキルもみんなめきめきと上達していき、何より両立するバランス感覚が身につきます。子どもの年齢は3歳未満としていますが、3歳を過ぎると走り回るほど元気になるので、そうなると会社としても騒がしくなりますし、子どもにとっても保育園の方がいい環境になります。なので、もしお子さんと一緒に働きたい方がいれば妊娠中から出産後3ヶ月までは、スタートに最適なひとつの目安の時期といえましょうか。

スタッフ一人ひとりのスタイルに合わせた働き方

 子連れ出勤の場合、仕事内容は会社ではネットでの接客や顧客管理、店舗ではお客様に接客をしてもらっています。テレワークも推奨しており、その際は写真の加工や資料作りといったことをお願いしています。ただ、一人ひとりのスキルに合わせて仕事をお願いして適材適所で働いてもらうのが当社のスタイルです。授乳をしながら仕事ができるので親子共に安心して仕事ができ、スタッフ全員がいきいきとしています。
 これまで、子連れ出勤の体験者は300人を超えました。自社事業だけでなく、子連れスタイルの普及団体の立ち上げや、個人的に大学の客員研究員を務めさせていただくなど、活動の幅を広げています。
 当社の取り組みは、国や地方自治体、団体の皆様が視察で来社いただいたり、グッドデザイン賞や日本助産師会に唯一の推奨商品としてモーハウスブラなどを認定をいただくなど、受賞・認定数は25を超えます。本当に皆様に支えられてここまでやってこられたと感謝しかありません。

今後の展開

 私たちは授乳服などの衣服で子育て中のお母さんをサポートしていますが、根底には「全ての女性が周りの目を気にせずいきいきと自由に輝けるように」という願いがあります。
 もちろんその先には、お母さん自身が前向きな気持ちになれたことで、明るい家庭になり、旦那様とのコミュニケーションが円滑になったりと、より良い社会になってほしいとの想いがあります。
 働きに来た方が「子連れで働けてよかった」で終わるのではなく、「子連れ出勤」が、多くの方々にとっての働き方の可能性に気づくきっかけになるといいなと思います。これまで通り一人ひとりに合った働きやすい環境を作っていき、仕事も子育ても両立できる人材を育てる職場であり続けたいと思っています。
 以前、「以前は生きていくことが辛かったのですが、授乳服のおかげで今では前向きに楽しく生きています」や「授乳服のおかげで子育てが楽しくなり、3人目ができました」というお客様からの声をいただいたことがありました。授乳服で救われる命も生まれてくる新たな命もあるということを大切にしていきたいです。

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