【株式会社石川ツエーゲン】プロスポーツで 石川を盛り上げる 挑戦を、この街の伝統に。   サッカーを通じ、人・まちを育てる

ツエーゲン金沢(株式会社石川ツエーゲン)
代表取締役 西川圭史GM

 赤と黒で彩られたクロユリに、Zweigen Kanazawaの文字。ドイツ語のzwei(2)とgehen(進む)で「チームとサポーターが共に進んでいく」を意味し、「つえーげん!」(金沢弁:強いんだっ!)の意味も併せ持つ石川のプロサッカークラブ「ツエーゲン金沢」のエンブレムだ。
 そのチーム名通り、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)に加盟し、2020年時点での所属ディビジョンはJ2リーグと健闘を続けている。創設始めからJリーグに加盟できたわけではなく、望み続け、挑戦し続けて掴み取ったリーグであり、ディビジョンだ。J2リーグに所属しながらも、選手もスタッフも多い方ではない。むしろ少数精鋭だと西川圭史ゼネラルマネージャーは話す。その中で「そこまでやるか」を追求し、実践していく力がある。
 ツエーゲン金沢が掲げるクラブ理念は実にストレートで、深い。

―― 挑戦を、この街の伝統に。――

クラブ全体でさまざまなことに挑戦する方針

代表取締役 西川圭史ゼネラルマネージャー

ツエーゲン金沢のクラブ理念は設立当初からありましたが、2019年に「挑戦を、この街の伝統に。」と新たに刷新し、「サッカーという競技にとどまらないクラブの価値」を求め〈5つの価値〉を提唱、実践しています。
5つの価値とは、「つなぐ」「楽しむ」「夢見る」「育てる」「つくる」の5項目です。これらの実践例の一部を項目ごとに挙げますと、次のようになります。
まず、「つなぐ」。これは、県内各所でのパブリックビューイングが挙げられます。スタジアムから遠く、日頃観戦に行きにくい地域で、リアルタイムで大画面の観戦をすることは、その地域にとって新鮮ですし、私たちも新しいサポーターとつながる期待があります。2019年で言えば、山中温泉や和倉温泉など県内各所で計5回開催し、まちのにぎわい創出にもつながったとの声を聞いています。スポーツは老若男女問わずに熱中でき、共通の言語となれるものです。ツエーゲン金沢を通じて、試合観戦や練習見学などに訪れ、夫婦や家族での行動、会話が増えたという声もよく聞くようになり、喜ばしく思っています。
「楽しむ」では、家族で半日楽しめる空間・スタジアムづくりを目指し、さまざまなコラボイベントを企画・実施しています。
「夢見る」は、主に子どもたちの夢を広げ育むことを軸として、キッズキャラバンやサッカー教室を実施、小中学生向けの職業講話では「サッカーを仕事とすること」についてお伝えしてきました。
そして、「育てる」については、世界でも通用する石川発の才能を育てるべく、ツエーゲン金沢アカデミー部門で若き才能を育成しています。2019年度にはU-18がプリンスリーグ参入を決め、U-15金沢は2018年の高円宮杯で全国準優勝という輝かしい実績を上げました。県内6箇所で10校のサッカースクールを開校し、約300人の子どもたちにサッカーの技術・戦術を学んでもらっていますから、将来が楽しみです。
最後の「つくる」は、新たな価値の創造です。2018年に北陸初のブラインドサッカーのチーム「ツエーゲン金沢BFC」を立ち上げ、2019年には念願の公式戦デビューを果たしました。また、病院と連携し、精神疾患の患者さんのリハビリプログラムの一環としてのサッカー教室を開催しています。
これらはほぼ全てが長期的視野の活動です。一度や二度で劇的に地域が活性化するものではありませんが、継続するほど地域活性化の基に成り得る、将来性の高いものばかりです。サッカーに限らず、スポーツをする人は活気があります。その姿を観に行く人にも活気がありますし、交流人口の拡大や若い人に「挑戦」の楽しさを伝えられることにもなるでしょう。それらが巡り巡って、まちの活力を創造する――私たちはそれを信じて活動しているのです。

郷土出身選手の活躍が、まちとひとが活気づくきっかけに

スクールコーチによる巡回サッカー教室「キッズキャラバン」

5つの価値を高めていけば、このまちに挑戦する喜びと、たくさんの生きがいを生み出していける。このまちに住むのが楽しくなる……そんな未来を実現するため、ツエーゲン金沢はより多くの活躍をすべきと考えています。ツエーゲン金沢が活躍することが、ひいては石川県を盛り上げ、石川県に住むことの価値と誇りを高めることにつながると考えています。
スポーツの種類を問わず、郷土出身選手の活躍は喜ばしく、出身地域ともなるとその話題で持ちきりになり、その地域が盛り上がるものです。
ですが、今の時代、子どもたちは生活スタイルや環境の変化により外で思いっきり遊ぶ機会が減っています。私は子どもたちが外で走り回っているまちが、元気なまちだという考えがありますから、子どもたちが外で身体を動かす機会を増やしたいと強く思っています。
思うだけでなく、機会創出をしよう。その考えも込めて行っているのが「キッズキャラバン」です。これは、県内の幼稚園・保育園・認定こども園約57園を訪問し、ツエーゲン金沢の指導者が子ども達に直接サッカーを教えるというもので、毎年開催しています。中には前年に1時間ほど会っただけの指導者の顔を覚えていて、再会時にあだ名で呼ぶ子もいるほどで、その子にとってサッカー教室での体験がとても楽しく心に残っている証だと、この活動の意義を実感しています。
幼い頃から外を駆け回って思いっきりサッカーをするという、子ども達にとって心底楽しい体験を通じて、まずはツエーゲン金沢やスポーツをより身近に感じてもらいたいと考えています。また、子ども達と一緒に家族でスポーツを観て、その楽しみが根付いてほしいという望みを含め、試合にご招待もしています。

選手と監督がピッチ上、あるいは外で「期待に応える」ということ

粘り強い試合が強みのツエーゲン金沢。そのほか、イベントやショーなどで演出にも工夫を凝らす

初めてスタジアムまで来てくださった方々、ずっと応援してくださっているサポーターの方々に、選手たちは1分でも1点でも粘り強く戦う試合で応えています。勝つことがベストですが、当然全てに勝てるわけではありません。前半45分と後半45分、さらにアディショナルタイムもあれば、かなりの時間となります。広いフィールドを駆け巡って、最後まで諦めずに全力で戦うことが、期待と信頼に応えることだと考えています。
もちろん柳下監督はチームの采配・戦略を冷静に行い、選手一人ひとりの技術やポテンシャルを伸ばし、活かしています。特にゴール前のシーンを増やすことで、ベテランも初心者も分け隔てなく、誰が見ても盛り上がれる試合にしようとも話しています。
特に柳下監督の体制となってからは、選手陣の平均年齢が若いんです。対戦相手チームより2、3歳若いというのもざらにありますから、絶対に走り負けない。受け身ではなく、ボールを奪う意識を常に持ち、チャンスを逃さないサッカーが可能となっています。2019シーズンからは、セレッソ大阪U-18からDF石尾崚雅選手が、2020シーズンにはツエーゲン金沢U-18からGK上田樹選手が加入し、さらに高卒、大卒選手を多くとっていますので、選手の平均年齢が他と比べてかなり若い。ベテラン勢に比べて経験量は及びませんが、伸びしろがある。このツエーゲン金沢で結果を出すたびに、成長する様子をダイレクトに見られて楽しいですし、過去、「金沢の息子」と呼ばれた選手もいるほどです。
そして、選手一人ひとりが地域の子どもたちの夢、憧れの存在であり続けるように、監督には「クラブの代表、地域の代表という意識を持って、模範となる行動を心がけるように。ピッチ外でも〈見られている〉意識を持ち、自覚をしよう」と選手たちに指導してもらっています。

サッカーを通して地域のまちを作り、人を育てること――それが命題

チームとサポーターの想いが一つになり、2013年にJ3への加盟基準を満たし、
2014年J3リーグで優勝、J2昇格を果たした。

私が「地域の再開発に関わりたい」と強く思うようになったのは、1995年1月17日の阪神・淡路大震災からです。神戸出身の私は、高校3年で未曽有の大災害に遭い、各所で発生する火災、住宅の倒壊、ライフラインや交通網がずたずたに断たれるさまを目の当たりにしました。全国からの応援を受けつつ、復興に向けた再開発事業が進められていくまちの姿、その地域の一員として活動したことが、今の私の信念につながっています。
後に大学へ進み、社会に出て、銀行に入行し、東京と金沢を行き来することが多くなりました。仕事を通してそれぞれの地域の様子や人材の育成を見るうちに、「もっと人材育成に注力した仕事をしたい」と考えるようになり、独立して人材育成会社を立ち上げました。しばらくその会社を経営していたのですが、金沢での活動からご縁がつながり、2011年よりツエーゲン金沢へ入社したのです。
ハード面だけでなく「人」も大切にする考え。単に「Jリーグ」を目指すサッカークラブではなく、サッカーを通じて、地域のまち・人を作り、育てる――ツエーゲン金沢があるこの地域で、人を、まちを育てたいと思い、お話を受けました。
私が着任した時は、ツエーゲン金沢はJリーグへの準加盟を切望していた時でした。3年連続で加盟申請が見送られていますが、当時のJリーグ加盟ルールは厳しく、Jリーグ仕様のスタジアムでない限り、いくら勝ってもJリーグへ加盟することができなかったのです。それもあって、当時は難しい状況に置かれながらも、ひとつでも多くの試合に勝つために選手もサポーターも全力を尽くしていました。
しかし、2012年にルールが改正され、新規参入を目指すクラブだけを審査するのではなく、既存のクラブも含めて財政や組織体制など総合的な審査が行われるようになりました。そのなかでスタジアム要件が大幅に緩和され、「そのルールなら、スタジアムを改修できます」とピッチ拡大やドーピング検査室の設置など、石川県側からのバックアップをいただけました。選手とサポーターもまた「勝ったらJリーグへ上がれる!」とモチベーションが非常に高まり、2013年にJ3への加盟基準を満たし、2014年J3リーグで優勝、J2昇格も果たすという快挙を成し遂げたのです。

地域のパートナーのご支援があってこその活動

ツエーゲン公式キャラクターのゲンゾイヤー(左)とヤサガラス(右)。
ハーフタイムのショーでも人気を誇る

現在、ツエーゲン金沢には約250社の企業がパートナー(スポンサー)についてくださっています。「地域の元気につながるから」と、当クラブの収入4割強を支えてくださっています。残りのうち1割が試合の入場料収入であり、ここもまだまだ伸びしろがあると捉えています。というのも、金沢には「スポーツを観に行く文化」が、まだ根付いていません。つまり、まだまだ観客やサポーターを増やせる余地があるということです。
試合だけを観戦するのではなく、1日たっぷり楽しめるようにとの思いで、試合開始3時間前からツエーゲン茶屋街(飲食エリア)やステージイベントを開いています。試合開始1時間前には選手たちの練習が始まります。試合の前後、あるいは最中に観戦者同士の交流があれば、より一層、「プロサッカーの試合を観に来た!」というライブ感が高まることでしょう。
また、「日本一楽しいサッカークラブ」を目指して、ホームゲームではエンターテインメント性も追及しています。そのひとつがハーフタイムのショーです。ツエーゲン金沢のマスコット「ゲンゾー」によるマスコットショーはもちろんですが、観客の予想を飛び越えたショーをして楽しませたいとの思いで、「正義の味方ゲンゾイヤーvs悪の化身ヤサガラス」ヒーローショーを展開しました。これが私たちの予想以上に楽しんでいただけたようで、ツイッターでトレンド入りをしたんですよ(笑)。
これらの試合もショーも企画しているのは、全てツエーゲン金沢の従業員です。従業員数は2020年に2名入社して14名となりましたが、J2のクラブとしては少なめかもしれません。逆に、少数だからこそ、担当できること、その影響力の大きさに喜びを感じてもらい、挑戦心を持って取り組んでもらっています。
ツエーゲン金沢は「挑戦する人」とともに歩み続けたい。その一心で試合を、地域活動を続けています。

株式会社石川ツエーゲン
設立 1956(昭和31)年(金沢サッカークラブとして)
従業員 14名 ※2020(令和2)年4月末時点
本社住所 石川県金沢市示野町西2
電話番号 076-254-5081
URL https:// www.zweigen-kanazawa.jp

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