日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社は、株式会社日立製作所とオムロン株式会社のATM事業が融合し、2004年に誕生した合弁会社だ。日本一のシェアを誇るATM事業の強みや挑戦中の新事業などについて、代表取締役の八木鉄也社長やメカトロビジネス推進センタ長の加藤利一執行役員、コア技術開発センタ技術戦略部の小川源太主任技師に話を伺った。
オムロンはキャッシュディスペンサー(CD:現金自動支払機)を日本で初めて生み出し、日立製作所は、ATM(現金自動預払機)の製造に取り組んできた会社です。両社とも2000年代に入って海外展開するなど共通点も多かったことから、一つになってさらに成長しようと当社が誕生しました。現在も、世界で最も信頼されるターミナル・ソリューション・ベンダーを目指して挑戦を続けています。
世界トップレベルのシェアを誇る紙幣モジュール
当社はATMをはじめとする金融自動機の企画、開発から製造、販売までを一気通貫で提供しています。
ATMに関しては日本一のシェア、海外でもアジアを中心に多数の納入実績があります。
ATMでは現金を扱いますから、紙幣や硬貨を瞬時に識別するセンシング技術、紙幣を金種ごとに高速で搬送・収納するハンドリング技術、指静脈認証装置などのセキュリティ技術の3つがコア技術となります。
各々の技術力の高さに加え、ユニバーサルデザインなどの周辺技術やノウハウを合わせ、1つのソリューションとしてエンジニアリングできる、これが当社最大の強みです。
さらに現在は、海外パートナー企業に提供しているATMのエンジンでもある紙幣還流モジュールでは世界トップレベルのシェアを誇っています。
ATM機器は日本一、紙幣モジュールが世界トップレベルという称号は、高い技術力の証しです。加えて、金融分野のルールや専門知識、お客様のニーズを的確に製品に落とし込めるノウハウ、企画・設計から導入後の運用までワンストップで提供できるバリューチェーンシステムなども、当社の強みです。
企業の原点回帰を目指して新事業に挑戦
ATMでは日本一、紙幣モジュールでは世界トップレベルのシェアを持つ当社ですが、さらなる成長を目指して新たな挑戦にも取り組んでいます。
これには世界的なキャッシュレス化の進行が影響しています。
ATM関連事業は、現金を扱う装置ですが、キャッシュレス化が進むにつれてATMの台数が減少していくことは事実であり、その流れは今も着実に進んでいます。
しかしながら現在、日本には約20万台、世界にも約330万台のATMが存在するとされ、それが1年や2年でゼロになることはありません。
そのため、事業として数年は成り立つだろうという安心感、そして何よりも「自分たちは日本一、世界トップレベルのATMベンダーだ」という意識が強まり、現状に満足してしまうのでは、と危惧する思いがあります。
そこで危機感を全社で共有し、「世の中の課題をATM事業などで培った技術力とノウハウを駆使して解決する」というものづくりの原点に立ち返るべく、新たなソリューション事業を立ち上げました。
3つの新たなソリューション事業で勝負
自分たちの強みを生かすことを考えた結果、3つの分野で新たな挑戦を始めています。
1つ目は日本国内にある金融機関に対して、窓口業務のリモート化支援や現金を伴う業務のセルフ化といった、業務効率化や省人化を支援するようなソリューションを提供するというもの。
2つ目が、海外の金融機関をターゲットとしたマネージドサービス、いわゆるアウトソーシング支援です。
資産運用やコンサルティングなど銀行の本来業務に集中できるよう、ATMの保守管理や監視業務を当社で担います。すでにインドで約6万台のアウトソーシング実績を持っているので、この実績をインド以外の国々に展開していくことに取り組んでいます。
そして3つ目がメカトロ技術の展開です。
先述の通り、ATM機器は機械、電気、電子、情報など多種多様な技術を高度に融合し、1つのソリューションとして提供しています。これらの技術を金融以外の分野のマシンやロボットなどに応用し、結果的により多くのお客様の利益に貢献しようと取り組んでいます。
新事業は収益化に加えて人材育成の側面も
3つの新ソリューション事業の中で、メカトロ関連事業の具体例をご紹介します。
メカトロ事業は大きくインダストリー関連とヘルスケア関連に分けられます。
たとえば、建設には様々な工程が存在し、墨出しと呼ばれる工程があります。これは設計図面に基づいて材料となる木材などに線を引く作業を指しますが、こういった金融とは関係のない産業と関わるような作業を行うロボットがインダストリー関連です。
他にもヘルスケアに関連する病院や薬局の自動精算システム、服薬支援ロボット、人の安全を守る警備会社の警備ロボットなど。
これまでATMで培ってきた技術やノウハウを応用し、新たな分野のお客様の困りごとを解決するソリューションの提案に取り組んでいます。
世の中に今までなかったものを提案するため、お客様との綿密なコミュニケーションや試行錯誤する必要があります。
その影響か、新たなジャンルへのビジネス展開が最大の目的なのですが、新事業への挑戦の意識、お客様を知ろうとする姿勢や提案力、エンジニアリング力の育成といった面でも大きな効果が出ています。
【活躍する若手社員】担当したロボットの活躍を見るのが一番のやりがい
永井 馨/メカトロビジネス推進センタ
ソリューション開発部 開発第2課員
「入社8年目ですが、現在はメカトロ事業で開発するロボットのメカ設計を担当しています。具体的には警備や墨出し、服薬支援ロボットの設計、検証、評価などをしています。
自分が試行錯誤を繰り返し設計した製品が世の中で使われて誰かの役に立っているのを見ると、困りごとのヒアリングから関わっているだけに喜びも大きいです。
また、制作はお客様の声を反映させながら行うため、ダイレクトな反応を体感できるのもやりがいやおもしろさに繋がっています。今後はプログラミングや電気系も学び、自分の関わる範疇を広げ、ATM事業に代わる製品開発に携わりたいです」
アイデアイベントで社内を活性化
当社では、全社員が「世の中の課題を解決する」という意識を常に持ち続けることを目指し、社内風土改革に取り組んでいます。
その一環として、全社員を対象にビジネスアイデアを競う「イノベーションアワード」を開催しました。
グランプリ100万円、準グランプリ30万円という賞金に加え、実際に新規事業として挑戦できるとあって社内でも話題になった結果、今の事業に関連するものから突飛なものまで多種多様なアイデアが1000件以上集まりました。
選考の結果、今回はグランプリに該当するものはありませんでしたが、準グランプリは2件選出となりました。
通常業務では開発に関っていない若手社員が準グランプリを獲得したことで、年次も部門も関係ないことが証明され、社員のイノベーションアワードに対する認識が変わり、次回はさらに良いアイデアが出て社内が活性化することを期待しています。
【活躍する若手社員】映画鑑賞時に思いついたアイデアで受賞
門川 隆進/品質保証本部 コトづくり品質保証部ソリューションサービス 品質保証課員
「イノベーションアワードで準グランプリをいただきました。受賞したのは、当社ではまだ未活用の『超音波』を利用するアイデアです。実は、プライベートで映画を観ている時に思いついたことがヒントになっています。
所属は品質保証部という市場調査やお客様と直接接しない部門ですが、イベントの告知があった時からいくつかのアイデアが浮かんでいました。今は事業化に向けて勉強中ですが、新鮮な気持ちで取り組んでいます」
やりがいを持って働ける会社を選んでほしい
当社は現金を扱うATMなどにおいて高度な技術を持ち、それをうまく組み合わせたり応用することで類い希なるソリューションを生み出してきました。そのノウハウは、日本の社会インフラをしっかりと支えています。
就職活動では「何を成し遂げたいのか。どんな人生を歩みたいのか」を深く考え、知名度よりもやりがいと誇りを持って働ける会社を探してください。当社をそんな会社の一つだと感じ、「世界を舞台に活躍したい!」という熱意を持った方のご応募をお待ちしています。
日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 設立:2004年 事業内容 :ATM 等の情報機器、メカトロ機器の企画、開発、設計、製造、 販売およびサービス・ソリューションの提供 資本金:85億円 従業員数:883名(2021年 3 月 31 日現在) 本社住所:愛知県尾張旭市晴丘町池上 1 番地 電話番号:0561-53-6132 URL:https://www.hitachi-omron-ts.co.jp/