- 設立 1956(昭和31)年6月
- 事業内容 半導体事業、太陽電池事業、 工作機械産業機械事業
- 資本金 2,800万円
- 従業員 91名 ※2020(令和2)年5月1日時点
- 本社住所 石川県白山市旭丘4-12
- 電話番号 076-275-6131
- URL http://www.bbskinmei.co.jp
世界シェア90%以上の半導体関連装置を製造・販売し、平成26年には経済産業省「グローバルニッチトップ企業100選」にも選出(その他多くの受賞歴有)。ニッチな分野で世界をリードし、顧客のニーズに応えて世界にひとつだけの装置を生み出し続けているメーカーが白山市にある。多種多様な製品を手がけながらも、従業員数100名以下をキープした少数精鋭の会社で、一体どのような取り組みが行われているのか?代表取締役の川原龍之介社長に話を聞いた。
始まりは小さな町工場。OEMから自社開発、そして世界へ
昭和31年、「金沢を明るくしたい」という願いを込めて「金明工鐵」の社名で、金沢市の示野町に私の祖父が立ち上げた会社です。創業当初は社員数7~8人の町工場の鉄工所であり、各種装置の製作はしていませんでした。当社は、初代は祖父、二代目が叔父、三代目が父、私は四代目となりますが、特に三代目は技術者で開発にもかなり前向きでした。部品加工を手がけるうちに、「Assembly(組立て作業)をしてみないか」「ひとつの装置として製作してほしい」とお客様から相談され、さらにOEM製品も作っていく中で、三代目が「自分達でもこういう装置を開発してみたい」との思いを強め、開発の道へ進んでいったそうです。
昭和60年に白山市へ工場を全面移転するにあたり「BBS金明」と社名を改め、平成元年にNC両頭フライス盤を開発・販売し、平成11年にウェーハエッジ研磨装置の開発・製造を開始。同年、「パッド研磨」を開発、ISO9001認証を取得しました。パッド研磨方式のウェーハエッジ研磨装置をBBSブランドとして世に出したことが品質と歩留まり向上のブレークスルーとなり、同時に「装置メーカー」として広く知られるきっかけになりました。
当社のモノづくりの根幹にあるのは、専用装置でありながら将来的に新たなニーズに応えることができるよう、あらかじめユニットを入れ替えられるように設計し、ユニットを交換することにより色々な部品の製作を可能とした、汎用性を持たせた構造になった装置の製作です。これにより課題点や要望が見えやすく、必要に応じて取捨選択しつつ向上を重ねながらモノづくりに取り組めるのです。これは加工専用装置体系の一種で、Building Block Systemといい、現社名の「BBS」にはこの考え方が込められています。
国内外で熱望されるBBS金明の装置と技術
世界シェア90%以上を誇る半導体関連装置をはじめ、工作機械関連装置、太陽光関連装置の3本柱を主力事業に立て、さらに消耗品・副資材の分野にも力を入れています。平成26年に「グローバルニッチトップ企業100選」に選定されたことに加えて、ここ3年ほど毎年売上が急激に伸び続けていますが、これは特殊な装置を改めて開発したのではなく、今までコツコツ開発・製造し続けてきた当社の半導体関連装置の需要が、世界的に一気に高まったと見ています。
しかしながら、その伸び方は私の予想を超えており、これまで30億円前後で推移していた売上が突然60億円、翌年には100億円を超えました。仕事量で言えば約4倍、ふつうなら社員数を増やすところでしょうが、私はそれをしませんでした。この特需がいつまでも続くことはありえませんし、慌てて人員を増強することで、当社の製品品質と納期が守れなくなるのではないかと考えたからです。
それでも需要には応えないといけない。立場上、仕事を指示しないといけない――私は今まで現場でがんばってきた社員の力を信じ、社員たちに「会社で改善できることは何でもするから、なんとかこの需要に対応してほしい」とお願いしました。社員たちは知恵を絞り合い、工程を改善し、多くの協力会社様達の助けも受け、なんとか乗り切ることができました。
翌年はさらに受注が倍増し、かなり厳しい状況になると考えましたが、その心配は杞憂でした。1年目ほどの苦労はなく仕事を乗り切った社員達に訊くと、「今までになかった〈特需対応〉の仕組みを新構築する方が大変でしたよ」との返答。改めて彼らの柔軟性とポテンシャルを頼もしく感じたものです。
生産性で言えば、約90名の社員がこの時に「1人あたり1億円」の仕事をしたことになります。これは製造業では考えられないことで、心底すごいと思い、良い社員に恵まれたと感謝しました。この経験で全社員が大きな力をつけたと思いますし、今後どんな波が来ても、このメンバーで乗り越えられると確信しています。
簡単な「当たり前」こそ、深くて難しい
私が社内で説くのは「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の毎日の徹底」および社是です。昔はあいさつも掃除もできない社員が多く、社内環境も良くなかったのですが、ISO9001およびISO14001に取り組むようになってから、彼らの意識が自然と変わっていきました。
また、平成22年の新社屋建設の際に「工場らしからぬ工場」を目指したデザインにしたのも、社員の意識改革の一助になったようです。「キレイな会社をキレイに使いたい」と日頃から美化意識を持ってくれているので、事務棟も工場棟もキレイなままです。キレイで明るい環境で、明るくあいさつをする社員も増えました。
5Sと社是には難しいことは何一つ書かれていません。ゴミを見かけたら拾う、人と会う時はあいさつをする――どれも当たり前で簡単なものばかりです。しかしこの「当たり前」が難しい。そこを自発的に心がけ、実践してくれる社風ができたことが、本当に誇らしく思います。
私が社員数100名未満にこだわるのは、「会社は家、社員は家族のようなもの」と考えているからです。私にとって100名未満が社員の顔と名前を覚えられるギリギリの人数であり、共に働く仲間として、その人となりを知り、声を聞きたいのです。実際、当社の社員は根が真面目で素直な人ばかりなので、自分の個性と考えを活かし、5Sのもと「自由」に働いてくれています。
大切な社員達と共に、流動するトレンドを読み解き、できることを考えつつ、選択して、開発して、製品を作るのが当社の使命です。私たちは少数精鋭で手応えを求め、さらなる高みを目指しています。
社員インタビューー 技術部 機械設計課 開発部長 伊藤洋之さん
世界中のモノづくりに貢献できる「縁の下の力持ち」
就職活動で会社見学をした当時、ウェーハエッジ研磨装置の初号機を製作中でした。「定番のモノづくりじゃない。ここで作った装置が国内だけでなく、世界レベルで縁の下の力持ち的な存在になる」と学生ながらに思いました。少数精鋭で実績を出していることもあり、高い安定性を感じて入社しました。
入社して20年、開発部長としてモノづくりの「起点」となって励んでいます。年々、構成部品が複雑化し、作成点数も増加、お客様のニーズも多様化していますから、毎回が「世界で一つ」のモノづくりです。たまに海外出張もあり、問題を解決し、ニーズに応えるたびにやりがいを感じています。
当社は福利厚生の一環として小型の社用船があり、船舶免許を持つ社長自らが操縦し、晴れた休日は社内と協力会社の釣り好きが集まって海に出ています。そこから仲が深まったり、仕事に発展したりと嬉しい波及効果があり、休日も充実しています。
社員インタビュー 技術部 機械設計課 主任 北村浩樹さん
働き甲斐のある職場で、ニーズに応えたモノづくりを追求
他県で開発・設計の会社に勤めていましたが、家庭の事情で石川県の中能登に移住しました。県内のモノづくり企業を探す中で当社を知ったのですが、「グローバルニッチトップ企業100選」に選出されていることが、すごく衝撃的でした。ニッチ企業は国内でトップになれても、世界シェアは奪えないと思っていましたから。汎用機だけでなく、専用機、開発機も手がける……調べるほどに魅了されました。中でも一番の決め手は社長の人格です。面接で「社長は神輿で、社員が担いでくれないと意味が無い」と言われ、こんなにも社員に歩み寄ってくれていることに感動し、「通勤が片道約70㎞でも構わない、この人の下で働きたい」と思って入社しました。
今年で5年目ですが、働き甲斐は変わりません。今後は開発をもっとやりたいですし、汎用機のリピートも増やしたい。それらを後輩につなげ、リードできるようにがんばります。
社員インタビューー 技術部 機械設計課 久保武之さん
風通しがいい会社で自分のスキルを伸ばせる
私は幼い頃からプラモデルなど何かを組み立てることが好きで、工業高校、大学は工学部とずっと機械系でしたから、自分が学んできたことが活かせて、主流の機械以外に新しい設計にも携わりたいと思って志望しました。
入社後1年はOJTで各部署を回り、基礎を学びました。この時に各部署の先輩とも接点ができたので、機械設計課に配属された後も相談しやすかったですね。MEX金沢など機械系の展示会を見学したいと上司に相談すると、「会社として皆で行くか」と即実行してくれたのも嬉しかったです。
入社4年目となり、「装置の中の一つのユニットの担当」として製図から完成まで任されていますが、将来的には会社を支える機械をすべて1から製図できるように自分を高めていきたいです。