- 設立 2004年(開園は1977年)
- 事業内容 保育所の経営、一時預かり事業
- 本社住所 埼玉県ふじみ野市駒林79-2
- 電話番号 049-263-0857
- URL http://www.tanpopohoikuen.jp/
東京都内への交通アクセスが良く、都内よりは家賃などの物価が安い埼玉は、子育て世代が住みやすい地域としても人気だ。埼玉の中でもふじみ野市では、ここ5年ほどで多くの保育園が新たに開園している。ふじみ野市内で2つの園を運営する「社会福祉法人たんぽぽ会」のたんぽぽ保育園園長である大野伸治氏から、同園の保育について聞いた。
大人は子どもを映す鏡。
保育士も主体的に動き「保育って楽しい!」
私たちはふじみ野市駒林で「たんぽぽ保育園」(定員120名)を、同市西で「たんぽぽ第二保育園」(定員103名)を運営。2つの園は共に認可保育所で、0歳から5歳の子どもたちの保育を行っています。
保育目標「心・知・体」で豊かな子に
保育士になりたい最も多い理由は「子どもが好きだから」ですが、それだけでは仕事はできません。保育士には、子どもたちの人格形成に関わること、命を守ることという大きな役割があります。
たんぽぽ会の2つの園の保育目標は「心・知・体」です。「心」は助けあい、協力しあい、ふれあい、思いやりあい。人と人との関わりを、いい関係で交われる、愛に満ちた心豊かな子に育ってほしい。「知」は「知識よりも知恵を使える子」を念頭に、さまざまな体験を通して豊かな創造力やひらめき、知識にとらわれない柔軟な発想ができる子に育ってほしい。「体」は青空の下で元気に遊び、健康でたくましく、何事にも進んで参加できる子に育ってほしいということです。
心と知恵と体は相互に深い関わりを持っています。 この3つの〝輪〟がかけることなく、共に成長しあい、調和のとれた豊かな子に育ってほしいという願いを基に、日々保育を行っています。
クライミングで「心の強さ」育てる
私が園長を務めるたんぽぽ保育園では、特に「今の時代を生きる力を育てる保育」をしています。大きな特色として、園内に「クライミングウォール」を設置。これは、スポーツのクライミングを楽しむためにホールド(突起)を付けた人工の壁のことです。実はこの壁があることで、子どもたちの「心の強さ」「主体性」「あきらめずにチャレンジする気持ち」を育てることができます。
このウォールにはスタートとゴールがあり、子どもたちはホールドだけを頼りに、自分の手と足を使ってゴールをめざします。ゴールへ行くための道のりは20ルート。3歳以上が対象で、1ルートごとにメダルがもらえるのですが、20ルートを全て制覇できるのは、毎年1人いるかどうかです。
1年に2回「クライミングチャレンジ」という課外イベントがあり、その時は保護者も熱くなって応援します。ゴールできずに泣いて帰る子も多いのですが、保育士は手伝いません。
どうやったらゴールできるようになるのかを自分で考えて、努力する主体性を育てる。また、友だちがゴールできるようになったら「自分もやりたい」と思うようになる子もいるので、挑戦する気持ちが芽生えます。それが困難に当たった時に立ち向かえる力となってきますね。
保育士は、0歳から5歳という、子どもの人格の土台となる時期にずっと関わることになります。これは、その子の長い人生の一端を担う存在になることなので「この子たちのために、自分の存在がある」と思える仕事です。人を育てるというよりも、人生を共に過ごしていけるという喜びがあると思います。
保育士になるきっかけは、「自分が小さい時に保育士と出会って、自分もそうなりたいと思った」という人も多いです。実際、当園には卒園者が保育士として戻ってきて、働いている人もいます。この地域で育った子が、この地域のために戻ってきたというのは嬉しいし、とても素敵なことですよね。
開園から40年以上。いつの時代も子の成長は喜び
たんぽぽ会は、40年以上前の1977年に現在の理事長である大野幸代が「たんぽぽ保育室」を開園したことが始まりです。理事長は現在、たんぽぽ第二保育園の園長を兼務しています。
その後、2004年に「社会福祉法人たんぽぽ会」が成立。2011年には、現在のたんぽぽ保育園のあるふじみ野市駒林に移転しました。そして、2015年に同市西にたんぽぽ第二保育園を開園しました。
日本は少子化が進んでいるといわれていますが、都心への通勤もしやすく、子育てのしやすいふじみ野市では、近年でも子どもが増えています。ですから、開園当初は小規模だった私たちの園は、法人化し、さらに2つ目の園を開園するほどになりました。
40年以上の歴史の中で、時代の変化と共に保育園のあり方も変わり、求められるものも増えてきています。情報社会の中、子育てに関するさまざまな情報を目にする機会も多く、保護者の思いや考えも多様化してきています。保護者への対応の難しさを感じる時もありますが、子どもの成長に喜びを感じるのは今も昔も、みんな同じです。
運動会や発表会などの行事で子どもの成長が見られた時には「我が家の子がこんなことができるようになった!」と喜んでくれて「ありがとうございます」と言われることもあります。そういう時は、私たちも嬉しくなりますね。
子育て中の保育士も活躍できる働き方
現在、たんぽぽ保育園には全職員(用務員等含む)46名、第二保育園には約40名。20年以上勤務しているベテラン保育士もいます。子育て中の保育士もいるので、働き方は多様化しています。正職員として就職し、出産後にパート職員となり、自分の子どもが小学校に入学する頃に再び正職員になるという保育士もいますよ。
以前は、結婚や出産を機に辞めてしまう保育士が多かったです。でもそれでは、経験が必要な保育の仕事なのに、ようやく慣れてきた頃に辞めるということになってしまいます。保育の質の向上につながらないので、園としては困っていました。
そこで、新たな園を立ち上げてからは、出産後も子育てしやすく、保育士が長年働きやすい環境づくりをしてきました。正職員は、開園時間に合わせてシフトで勤務。小さい子どもがいる保育士は、できるだけ遅い勤務にならないよう、配慮したシフトを組んでいます。保育士の数は保育の質に直結するので、みんなに理解・協力してもらっています。毎月1回程度、土曜日の出勤がありますが、基本的には週休2日です。バースデー休暇や特別休暇もあります。
当園は有給が取得しやすく、10分単位で有給が取れるようにしています。自分も子育てをしながら働いている保育士が多いからです。例えば、平日の午後に自分の子どもの保護者会がある場合には、1時間だけ有給を取って会へ出席し、再び職場へ戻ってくることもできるようにしました。さまざまな工夫のおかげで、長年働く保育士が増えています。
大人は子どもを映す鏡。保育士も主体的に
当園の保育士は、保育実習をきっかけに来園し、そのまま就職した人が多いです。私たちは、新しい発想を取り入れることを推進しているので、保育士も自分が考える保育を展開しやすい環境です。例えば、毎年恒例の行事で使うものを自ら考えて手作りしたり、子どもたちが過ごす部屋の装飾やレイアウト変更もクラスの仲間と共に取り組むことができます。
これは「子どもの主体性を育てる」保育をしているからです。大人は子どもを映す鏡。大人が主体的に動く姿を子どもたちに見せなければなりません。保育士も自分の頭で考えて動き、「保育って楽しいな」と思ってもらいたいです。子どもは正直なので、大人が楽しそうに仕事をしていないと近寄ってこないんですよ
私たちは、保育士と子どもの絆や信頼関係を大事にしています。子どもたちの「心の基礎」を育てる時期なので、しっかりとした愛情と信頼関係が必要です。子どもの心に寄り添える人に保育士になってもらいたいです。
時代の変化と共に、保育士の役割はどんどん大きくなっています。教育の専門家から「保育士さんは国の宝だ」と言われたことがあるほど、誇りを持てる仕事なんです。
当園で保育士を採用する際には、心が豊かになる経験をどれだけしてきたか、ということを1つのポイントにしています。「おいしいものを食べる」、「きれいなものを見る」、「うまくいかなくて悔しい思いをする」。嬉しいことや楽しいことだけではなく、悲しかったことや悔しかったことも心を豊かにする大事な経験です。保育士をめざす方はいろんな経験をして、ぜひ心を豊かにしてください。