- 設立 1967年5月1日
- 資本金 2000万円
- 従業員 約140名
- 事業内容 ◆建物の空調自動制御及び工場・生産ラインの自動制御関連業務の受託 ◆中央監視システム、自動制御盤の設計・製造、制御ソフトウェアの設計・製作、制御機器の修理・検査及び現地改造作業 ◆各種オーダーメードの製作の受託
- 本社住所 神奈川県綾瀬市上土棚北4-9-16
- 電話番号 0467-78-1278(代表)
- URL http://www.noble-ele.co.jp/
オフィス街に建ち並ぶ高層ビルに欠かせないのが、空調システムだ。横浜みなとみらい地区や東京・丸の内、大手町などにあるビルの空調を自動制御する設備を手がけ、その業界では国内屈指の会社が、神奈川県綾瀬市にある「ノーブル電子工業 株式会社」である。ベトナムに現地法人を設立し、海外にも進出している同社の仕事と働き方について、二代目社長の土橋恒一氏に聞いた。
高層ビル空調など自動制御システムで業界オンリーワン! ベトナムにも進出、世界をめざす
当社は、高層ビルなど建物の空調を自動的に制御するシステム(ビルディング・オートメーション・システム)や、工場の生産ラインなどを自動的に制御するシステム(ファクトリー・オートメーション・システム)に関連する業務を行っています。
高層ビルなどでは「機械室」といわれる、一般の人は入れないところに当社の製品が設置されています。このため、当社の存在は一般にはあまり知られていないのですが、実は自動制御の業界では、日本でオンリーワンなんです。
現在は、神奈川・横浜みなとみらい地区、東京・丸の内や大手町などのオフィス街が営業の基盤です。中でも大手町の地下には、巨大な熱源プラントが設置されており、そのプラントの自動制御盤関連も当社が手がけているんですよ。
高層ビルの空調システム、設計からメンテナンスまで
高層ビルは、安全のために窓が開かないことが多いので、空調はなくてはならない設備です。一般的に空調といえば、エアコンを思い浮かべる人が多いと思います。でも、ビルは天井が高く、一般の住宅とは構造が違うため、通常のエアコンをそのまま使用すると、冷暖房の効率やコストが悪くなります。そこで、こうした問題を解決するために、システムを入れて自動制御することがとても重要なんです。
ビルという建物は1棟でも、その中には一般のオフィスだけではなく、レストランなどの飲食店や、歯科医院などのメディカル系、ホテルなども入っていますよね。ですから、それぞれの用途に合わせた快適な空調を提供しなければなりません。
高層ビル全ての自動制御をするには、まず各フロアの温度などデータを蓄積するリモート盤を通じて、中央監視室へ情報を集めます。そして、中央監視室で設定したデータを各フロアに送って、空調を制御します。
このためには、制御盤を作るための設計や、システムのソフトウェア製作、現場での設置工事なども必要です。また、ビル自体は建て直さなくとも、何年も経てばリニューアルをするので、空調設備もリニューアルしたり、継続的にメンテナンスが必要になります。
こうしたハードとソフト両方の設計・製作・製造、設置やメンテナンスまで、一貫して行えるのが当社の強み。全ての製品がそれぞれの建物に合わせたオーダーメイドで、特に設計は奥が深い仕事です。
他社にはマネができない仕事なので、当社が業界オンリーワンなんです。このため、景気に左右されることはほとんどありません。これまでも、リーマンショックなど不景気な時代はありましたが、当社は影響を受けませんでした。
家業に入社したら倒産寸前…。改革を断行
当社は1967年創業。創業者である私の父は、自動制御盤の組み立てや配線のみを行っていました。自動制御盤の設計・製作・製造、設置やメンテナンスまで、一貫して行うようになったのは、二代目である私が家業に入ってからです。
私は東京の駒澤大学で経営学を学んだ後、大手電機機器メーカーに入社。その後、家業を継ぐために電気関係の設計会社で修業して、1997年に当社へ入社しました。入社してから知ったのですが、その当時、当社には多額の借金があり、倒産寸前だったのです。
私は会社を救わなくてはと考え、トヨタの工場の仕組みについて書かれた本を読んだり、さまざまな工場へ見学に行ったりして、工場の経営について必死に勉強しました。そして「トヨタ式5S」=整理、整頓、清掃、清潔、躾などの改善方法を取り入れました。
工場の整理整頓をしてみると、新品だったはずの電線が、長期間使っていなかったために使えなくなっているものもありました。これでは、お金を捨てているようなものです。工場の中にある古くなった材料などを全て捨てたので、長年勤務しているベテラン職人の中には、私のやり方に反発する人もいました。しかし、どんどん会社を改革していきました。
ニッチな業界でオンリーワン! 海外進出も
社内の改革を断行すると同時に私は、なんとかして売上を上げようと、「高層ビルの自動制御システム全てをやろう」と考えました。先代は自動制御盤の中でも、各フロアのリモート盤を作っていたので、新たに中央監視室用の制御盤も作らなくてはなりません。でも、それができれば、高層ビルの空調システムに必要な自動制御盤は全て「メイドインノーブル」になると思ったのです。
それにはまず、制御盤のハードの設計をする必要があります。制御盤の機器のレイアウトやサイズを決めて、配線を考えなくてはならないのですが、当時の当社には設計部門がありませんでした。そこで伊勢原市に新たにオフィスを構え、設計部門を開設しました。また、以前は制御盤を作って納品するだけだったのですが、建設現場で工事ができるように、建設業の許可証も取得しました。
こうして、少しずつ事業規模を拡大。当時4人だった従業員は、現在140人に増えました。綾瀬市にある本社の他、オフィスは伊勢原、東京、品川にもあり、必要な材料や道具を積んだ社用車が、各現場を飛び回っています。各地にオフィスを設けたのは、お客さまに喜んでもらうため。いつもお客さまの近くにいることが大事だからです。さらに、ベトナムに現地法人を設け、海外進出も果たしました。
これは先代が、自動制御盤の製造という、ニッチなことをやってくれていたおかげです。私は「ニッチなところで一番になりたい」と、先代の事業をさらに伸ばして、現在の規模にすることができました。今ではお客さまから「ノーブルがいないと困る」と言われる存在になっています。
地球のことを考えながら、地域をリードする企業
当社のロゴは、私が家業を継いだ時に新たに作りました。緑色と水色を基調とし、緑色は大地を、水色は空を表し、地球をイメージしてデザインしています。自動制御は省エネに直結する技術なので、私たちはいつも地球環境のことを考えて仕事をしているからです。
地球規模のことを考えている一方で、地域経済をリードする企業として、経済産業省の「地域未来牽引企業」に選ばれました。これは売上などの数字だけではなく、人材育成などにも力を入れて、地域に根差している企業として選定されたもので、全国2000社のうちの1社です。
また、「神奈川県優良工場」も受賞。神奈川県内に立地し、製造業を営む中小企業の工場の中でも、経営成績、作業環境、生産技術などが特に優れており、ものづくり産業の発展に貢献しているとして表彰されました。本社のある綾瀬市の地域貢献にも積極的に協力しており、私は以前、綾瀬市を工業で活性化しようという「イノベーション推進委員会」の委員長も務めました。
本社周辺地域の工場などが、働き手としてベトナム人を受け入れる際には、橋渡し役としても活動しています。前述のように当社には、ベトナムの現地法人がありますから。
多くの日本人は、外国人と一緒に仕事をすることにまだ慣れていませんが、将来的には、日本で働く外国人がもっと増えます。生まれた国が違っても、みんな同じ人間です。肌の色や話す言葉が違うだけ。日本人とは文化が違う人たちが、世界にはたくさんいるんだということを、まずは覚えてほしいです。
欧米人は日本よりも上で、開発途上国の人は下と思っている人も多いですが、ビジネスはどの国の人とも対等にやるべきです。できるだけ早く、多くの日本人に国際的な感覚を身に付けてほしいと思います。
東南アジアの国々に「自動制御の世界」を
当社は、チャレンジする会社、みんなが前を向く会社でありたいと考えています。
人生は、一日一日の積み重ねです。1日24時間のうち、会社で仕事をしている時間が一番長いのです。その最も長く過ごす「仕事」の時間を輝かせることができなければ、人生を輝かせることはできません。仕事の時間を輝かせることができれば、人生は幸せだと思うのです。
従業員は20~40代が多く、仕事中はみんな集中していますが、普段は和気あいあいとした雰囲気で仲が良いです。親睦会として開く1年に2回のバーベキューには、約100人が参加。毎年、年末にはホテルの会場を借りて、全員参加の忘年会を開催します。
私は「会社は永遠でなければならない」と思っているので、人材育成を重要視しています。採用する時は、学歴や知識は重視しません。入社時に全く電気の知識がなくとも、当社の社員たちがきちんと教えます。
私も当社の取締役も文系で、最初は電気の知識はほとんどありませんでした。現在、活躍している従業員の中には、元美容師や元運転手という人もいますよ。
また例えば、設計に配属されたけれど現場の方が好きというように、自分と合わない部署に配属された時には、異動もできます。とにかく、やる気がある人、結果を出す人、失敗にくじけずにチャレンジする人は、ぜひ当社に来てほしいです。
当社は今後も、ハードとソフト両方の設計・製作・製造、設置やメンテナンスまで、一貫して行い、日本でオンリーワンの仕事をするという「本業」をしっかりと続けます。そしてさらに、海外はベトナムの他、インドネシア、ミャンマーなどへも進出予定です。
こうした国々は赤道に近く、年中暑い気候ですが、開発途上国にはまだ省エネといった感覚がなく、寒いくらいガンガンに冷房が効いています。だから当社は彼らに、省エネなどの「自動制御の世界」を教えたいのです。自動制御は、地球環境を守ることにもつながっています。