【株式会社水田製作所】プラスチック加工技術を高めつつ、 次世代を睨み、新分野のニーズも探索中

  • 設立   昭和9年11月3日
  • 事業内容 EMS事業(小規模電子機器製造受託)/OEM/ODM事業(設計〜生産受託)プラスチック部品の設計・製造/カスタム端子台の設計・製造/プリント基板製造/設計・開発支援/カーボンコンポジット製品の研究・開発/プリント基板『KIBAN:LIGHT』の開発・製造・販売
  • 資本金  1,000万円
  • 売上高  約36億5,000万円(2018年実績)
  • 従業員  83名(2019年9月1日時点)
  • 本社住所 兵庫県明石市西新町3丁目13番5号
  • 電話番号 078-923-0673
  • FAX   078-923-6124
  • URL   https://www.mizuta-inc.com/

 1934年に創業した株式会社水田製作所は、プラスチック成形事業を中心とし、大手電機メーカー向けのプリント基板や端子台などについて、開発提案から納品までワンストップで対応可能な点を強みとしている。さらに近年は、大手電機メーカーの厳しい品質要求を実現するために培った知見や技術を、新たな自社開発商品や新分野のビジネスに生かすべく挑戦を重ねている。今回は、代表取締役の水田潤社長、取締役の水田太郎専務、総務の村田亜衣さんに話をうかがった。
 株式会社水田製作所は、祖父がものづくりをしたいと考えて設立した会社です。プラスチック成形は創業時からの事業なのですが、今でこそ成熟産業とされているプラスチック成形も、創業当時は木材の代替素材となる『夢の素材』だったそうです。そこから大手電機メーカーとのビジネスが始まり、さまざまな事業に取り組みながら現在に至ります。ここでは水田製作所の強みや会社の雰囲気や制度、新しいチャレンジなどについてご紹介します。

プラスチック成形加工技術に強み

取締役の水田太郎専務と代表取締役の水田潤社長

 水田製作所は大手電機メーカーの一次協力会社として、製品に用いるプラスチック製品を中心に提供しています。強みは製品の外装・外観部品から、製品に内蔵されるような機構・機能部品まで、幅広い産業に向けたプラスチック成形製品の企画・製造に精通していることです。加えて、設計から量産までワンストップで対応できる点も、大きな強みと考えています。特にファブレスメーカー(工場を持たない企業)などのお客様の場合、製造に関する負担をかなり軽減することができます。
創業以来メイン事業の成形加工技術は、当社のコア技術のひとつと言えます。中でも、カーボンや金属をはじめとする異素材にプラスチックを組み合わせた複合一体成形技術は、高い付加価値を備えています。この技術をいかにして外部にアピールしていくかは、当社が抱える今後のミッションのひとつでもありますね。
もうひとつの強みとしては、大手電機メーカーとの強力な関係による事業安定性と高い信頼性があります。これまでの取り引きや関わりの中で、重電分野やメカトロニクス分野、エレクトロニクス分野など、幅広いジャンルのプラスチック成形品の製造ノウハウや知見を蓄積できています。これが最大の強みかもしれませんね。

形になりつつある新事業への挑戦

新規事業の展開図
KIBAN:LIGHT -KAGEE-のイメージ

 現在はBtoBのビジネスが中心の当社ですが、今後はBtoCのビジネスに広げていきたいと考えています。これまでのノウハウや知見が応用できて、なおかつ現在取り組んでいる事業にも経営資源としてフィードバックできるような新しい事業を模索しています。
こうした新事業は、主に専務が主体となって進めています。これは、責任が取れる経営幹部が率先して新事業に取り組むことで、社員がチャレンジできる環境を用意するため。既存の枠を超えた自由な発想を求めているからです。自らの意思で手を挙げた社員メンバーとともに新商品の開発や研究に取り組んでおり、すでに2つのプロダクトが生まれるなど、成果が出はじめています。
ひとつ目のプロダクト『KIBAN:LIGHT KAGEE』は、プリント基板の製造技術を活用した照明機器です。間接照明としてもオブジェとしても空間を彩ることができる、銅板のモバイル照明となっています。さまざまな展示会などに出展するととても好評で、2019年10月にリリースした改良型は、発売2カ月で累計200台を超える好スタートを切ることができました。この成功体験を糧に、さらにより良い製品への改良を進めています。
もうひとつが『MIZUTA COMPOSITE』と名づけたカーボン・コンポジット製品です。こちらは、カーボンやガラスクロスといった先端材料と、木や布との『複合化』を実現することで、新しい付加価値を創造しようという試みです。こちらもインテリアアイテムへの展開に向け、さらなる商品開発を進めていくつもりです。
今後のテーマは、生み出したプロダクトを収益につなげるための仕組みづくり。これを成功させて一気通貫の開発モデルを完成できれば、今後は新しいクリエイティビティをどんどん形にしていくつもりです。すでに次なるプロジェクトも進んでおり、詳細は明かせませんが、医療・ライフサイエンス分野で理化学研究所様と細胞培養に関する共同研究を行っています。

会社の諸制度のキーワードは『自由』

総務の村田亜衣さん
水田社長とのランチ会

 福利厚生も、生産改善活動に取り組む中で社員アンケートを実施した上で、プロジェクトチームを組んで話し合って策定するようにしています。派遣社員も参加可能な年2回の全社懇親会や社員旅行の実施、各部門で年1回行う懇親会費補助など、社員が希望することをできるだけ実現しようとしています。経営陣としても、このように利益の一部を社員満足度の向上に向ける意識を大切にし、長く働いてもらえる職場環境の実現には今後も努力を重ねていくつもりです。
当社の人事制度や福利厚生のキーワードは『自由』ではないかと考えます。社員一人ひとりの自由度が高く、経営層との距離も近い。会社の意思決定は、個人の希望をダイレクトに吸い上げて実行する環境下で行われています。これは大企業には絶対にありません。生産改善活動や社員一人ひとりがやりたいことを自分たちで決めて取り組むという流れが、全社一丸となって会社を盛り上げていく意識につながってきています。この流れでボトムアップ式の経営をしていきたいですね。社員一人ひとりが考えることを尊重し、やりたいことを実現する、そんな会社をめざします。

食堂など、全社改装プロジェクト 実行中!

2020年3月に完成予定の硯町工場の新食堂

 アセンブリなど現場の最前線では繊細な作業も多く、女性の力は不可欠です。産休や育休はすでに取得実績もあり、女性が長く働ける仕組みが整っています。また、面白い取り組みとしては、1カ月に1回、その月に誕生日を迎える社員に、社長自らプレゼントを手渡しするイベントがあって、これが結構好評なんですよ。こうした取り組みも、会社の一体感や経営と現場の距離短縮に役立っていれば嬉しいですね。
社員教育としては、新入社員から一人前になるまでの教育体制を構築しており、資格取得などに関しても物心両面からのサポートを惜しみません。
さらに現在、職場環境の改善にも取り組んでいまして、『KIBAN:LIGHT』をはじめとするプロダクト製品をどう活用できるかの実験場として、当社硯町工場のリノベーションを進めています。食堂はラウンジのような空間へ、また開発部門のオフィスも、驚きますよ(笑)。私たちもワクワクしています。2020年前半にこのプロジェクトを完了したのちには、会社全体をクリエイティビティを刺激するような空間にしていくつもりです。さらに、本社エリアには会社創立以来の歴史を感じられる空間もつくる予定になっています。オフィス空間の改革とお客様に対するおもてなしを強化し、より水田製作所の想いを感じていただける場にしたいと考えています。

『自由』と『変革』、そして『誠実さ』

 私たちは、元気で素直な人と一緒に働きたいと思っています。また、枠に囚われることなく、自由な発想ができる人を求めています。もちろん当社が最も大切にするカラーである『誠実さ』は外せません。
私は、仕事と関係ない興味や関心が偶然仕事とつながる……それが仕事だと思っています。まさに『KIBAN:LIGHT』はその好例です。そういう意味では、今私たち水田製作所のチャレンジに興味を持ってくれれば、必ず仕事を楽しんでもらえると思います。
もちろん面白いことに取り組める会社になるべく、会社としての努力はずっと続けます。むしろ変革を続けなければ、これからの時代を生き残れないという危機感すら持っています。アート、農業、健康、インテリア……さまざまな個性や興味関心を持つ人たちに集まっていただき、その個性を、新しい商品やサービスとして形にしていくつもりです。

『明石から世界へ』を合言葉に成長をめざす

 当社はまもなく創業90周年を迎えようとしています。これから入社する人は、働きながら100周年を迎えることになるでしょう。その頃には、明石から世界へ進出している企業のひとつとして、多くの人に認知されている企業になることをめざします。もちろんそのような成長戦略を実現するには、新ジャンルへの挑戦を成功させることが不可欠なことも十分認識しています。
安定性と信頼性を大切にしながら既存ビジネスをしっかりと継続し、同時に新しい挑戦もしながら会社を成長させていく。そんなビジネスの両輪を回転させながら、新しい事業を成功させたい。現在、医療・ライフサイエンス、建築デザインの2つは、これまで蒔いてきた種が花開くまであと一歩のところまできています。新たに加わってくれる仲間の個性が、これらのビジネスの花を咲かせてくれることを期待しています。

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