- 設立 2001年5月(創立1990年3月)
- 事業内容 介護保険事業
- 資本金 10,000,000円
- 従業員 52名(社員・パート含む)
- 本社住所 神奈川県横浜市港南区港南台2-12-10
- 電話番号 045-836-3075
- URL https://hot-care.com/
介護の仕事というと、福祉関連の専門学校や大学を卒業し、専門的な知識を身に付けた人が就くもの、と思う人が多いだろう。しかし、横浜市港南区にある「ホット介護サービス」では、異業種から転職したスタッフが多いのが特徴だ。その働き方と介護事業についての考え方を、同事業所を運営する「株式会社 楽」の竹井隆一取締役に聞いた。
社員全てが心理学をまなび、現場に応用
人間関係よく、異業種から介護も
当社が運営するホット介護サービスでは、デイサービス「ラベンダーの丘」、訪問介護「ホット介護サービス 港南台」、訪問入浴「ホット介護サービス 上永谷」の3つの事業を行っています。「仕事は楽しむもの」という想いから、会社名を「楽」としました。
介護の主な仕事は、要介護の方の自立支援です。そのためには、利用者ご本人に無理矢理やらせようとしてもダメで、心が動かなければなりません。それを理解しようと、当社では心理学(詳細は後述)を取り入れています。
古民家風の雰囲気、美容室レベルのサービスも
3つの事業のうち、ラベンダーの丘では、古民家風で家庭的な雰囲気を大切にした施設で、通所介護などを行っています。ここでは、懐かしい音楽などに触れたりしながら、昔の経験や思い出を語り合う心理療法「回想法」を取り入れ、認知症の予防改善に努めています。懐かしさを感じながら、昔話に目を輝かせる利用者さまの笑顔を見ると、私たちスタッフもうれしいです。
囲炉裏のある部屋もあり、利用者さまは楽しくワイワイと、大家族の雰囲気で食事ができます。食事は栄養士の指導のもと、栄養バランスのとれた献立を用意。ご家族がお迎えに来て、そのまま一緒に夕食をとっていただける延長サービスもあります。
浴室は、銭湯や温泉設備風で広々としており、更衣室には床暖房を完備。安全に楽しく入浴できます。入浴は誰にとっても、心も身体もリラックスできる幸せな時間ですよね。
さらに年間を通して、いろいろなイベントを行っています。春・夏・秋・冬と、利用者さまに季節を楽しんでいただいています。旅行会社と提携したオリジナル旅行サービス(保険外サービス)もあり、日頃接しているスタッフが同行するので、利用者さまは安心して旅行を楽しむことができます。
特に当社ならではのサービスは、美容です。経営母体が美容事業を行っているため、カット・カラー・パーマ・メイクなど、一般の美容室レベルの高品質な美容サービスを提供。訪問入浴では、ヘアカットをご希望の場合、介護の資格を持った美容師が利用者さまのもとへ伺います。ステキなヘアスタイルは、利用者さまの気持ちをリフレッシュさせる効果があると、私たちは考えています。
美容も介護もサービス業としての本質は同じ
当社はもともと、美容室を経営する会社として設立されました。私は16歳で高校を中退し、美容師の見習いとして歩み始め、27歳の時、大和市に美容室「アトリエ・カットライン」をオープン。同年の1990年に「有限会社 楽」を設立しました。
その後、2001年に訪問介護・訪問入浴事業・福祉用具レンタルの「ホット介護サービス」を開始。2004年に「株式会社 楽」と組織変更し、デイサービス「ラベンダーの丘」と訪問介護を開設。現在は、美容室2店舗(別会社)と3つの介護事業を運営しています。
福祉事業を始めた時、周囲から「随分違う業界に参入するんだね」とよく言われました。でも、私は「サービス業としての本質は同じ。使う知識と技術が違うだけ」と思っています。
あえて違いを言うなら、美容はカットやパーマの技術を使い、お客さまの心をゼロからプラスにするお手伝いをして、お客さまに喜んでいただく仕事。介護は介護の技術を使い、お客さまの心をマイナスからゼロにするお手伝いをして、ご本人や家族に喜んでいただく仕事、という違いでしょう。
私は、お客さまの幸福感の数だけスタッフも喜びを感じ、会社の利益につながると確信しています。今後も、お客さまやスタッフという「人間の幸福」を目的とした経営を行い、「会社は手段」という本来あるべき思想の元に、経営を行っていきます。
社員全員で心理学を学び「心身両面ケア」
当社では「心の健康」という価値をプラスできる介護をめざし、社員全員で心理学を学び、現場で応用しています。当社のめざす介護は、心身ともに苦痛を取り除き、毎日に楽しみを与えることができる介護です。「心身両面ケア」の基本として必要なのは、「受容=その人の存在を受け入れること」と「共感=その人の考え方、感じ方を肯定的に理解すること」だと考えています。
つまり、「受容と共感」が介護の仕事の中心です。相手をまず受け入れ、スタッフが共感して、その上でサービスを行うことが大事。それがないと、決められたことをやるだけの「作業」になってしまう。そこに仕事の楽しみはありません。
そこで2006年から、心理学の交流分析理論(TA =Transactional Analysis)を学び始めました。これは精神分析を土台とし、人間性心理学を取り入れて開発された、人の心と行動を快適にする心理学です。きっかけは、私が知り合いから紹介されて、心理学の講習を受けた時に「これはいい」と思ったからです。
この心理学(交流分析)では、自分自身を深く知ることができます。自分はどういう傾向にある人なのか、何を持っているのか、自分が行動を起こす原因は何なのか。自分が実際の行動に出る前の段階を、掘り出すようなイメージです。
交流分析について、もう少し詳しくお話しします。普段の生活において「人間関係がうまく築けず悩んでしまう」「訳もなくイライラしたことがある」「本当は仲良くしたいのに素っ気ない対応になってしまう」などの経験をしたことがある人もいると思います。
実は、それぞれの人の中に「人間関係を築く癖」が潜んでいます。交流分析はこの「人間関係を築く癖」を発見して改善する、心理学の理論のひとつ。この理論では、それぞれの人の傾向を、次の4つに分けます。
・第一の立場は、I’m OK. You’er OK.=自己肯定と他者肯定という「健全なポジション」
・第二の立場は、I’m not OK. You’er OK.=自己否定と他者肯定という「劣等感ポジション」
・ 第三の立場は、 I’m OK. You’er not OK.=自己肯定と他者否定という「ヒットラーポジション」
・ 第四の立場は、 I’m not OK. You’er not OK.=自己否定と他者否定という「あきらめポジション」
この心理学を学んだ社員からの感想です。「自分の状態を学んだことで、自分の言動や行動を客観的に見ることができるようになりました」「利用者さまの表情の内に秘められた感情に着目して、相手の立場に立った視点でサービスを提供したいと思います」「利用者さまの声にならない訴えをくみ取り、受け止められるように努力しています」
このように、交流分析によって自分を知ることは、前述の「心の健康をプラスした介護」のためのベースとなります。私たちは、まず自分を知ることによって、相手の心深くに届く介護ができるよう、日々学んでいます。
採用前に心理診断、仕事も人間関係も良好
現在、当社で働いているスタッフは、社員とパート合わせて52人。男女比は5:5で、ほとんどがこの地域に住む地元の人です。2001年に介護事業を始めてから18年になりますが、スタッフの平均勤続年数は10年以上です。
当社には3つの事業がありますが、それぞれの現場の裁量が大きい。事業所ごとに経費や利益などの数字も、全てのスタッフに開示しています。備品など必要なものを購入する判断も、全て各事業所の所長に任せており、所長に経営者として活躍してもらっている感じです。
また、もともと美容室の経営からスタートしたこともあり、介護事業でも「給料はお客さまからいただくもの」という考え方です。努力と工夫次第で、スタッフの給料が上がるという仕組みを採用しています。
当社の社員には、前職が印刷関係やバーテンダーなど、介護とは全く関係のなかった業界から転職した人が多いのも特徴です。異業種から来た人は「この会社でなければ、介護の仕事はしていなかった」と自分でも驚いていますよ。
当社の人材採用基準は「受容と共感ができる人」です。先述の心理学でいえば、自己肯定と他者肯定が両方できる人で、自分も相手も否定しない人です。
採用する前に、心理学理論に基づいて作られた性格診断テストを行い、どういう傾向にある人なのかを確認します。その診断を受けると、例えばCP(controlling parent)は責任感が強い傾向、NP(nurturing parent)はやさしさなどの受容する気持ちが強い傾向にある人ということがわかります。
NPの低い人は、相手に対してやさしくなれないので、介護事業に携わると、虐待などの問題を起こしてしまう可能性が高い。どんなに介護の仕事の経験や技術があっても、人のことを受け入れたり、共感したりすることができないので、利用者から受け入れられません。「仕事はできるけど、冷たいよね」というタイプの人ですね。
こういう人がいないので、当社で働くスタッフは「人間関係でイヤな思いをしたことがなく、働きやすい」「何か問題があっても、上司が真摯に対応してくれるので安心」「家庭の事情で仕事に影響があっても、会社側がきちんと相談に乗ってくれる」と話しています。
「人間が好きな人」を募集。将来は介護にゴルフも
今後は事業規模の拡大よりも、人材育成をきちんとやることが先だと考えています。事業規模の拡大を先に掲げてしまうと、私たちがめざしている「心の健康をプラスした介護」ができなくなるからです。人材をしっかり育成できれば、規模を拡大する可能性はあります。
昨年から、新たにゴルフ事業を始めました。ゴルフは、コースを歩いて運動しながら、打数を数えるので頭も使います。運動しながら頭も使うというのは、認知症の予防にいいと言われているので、将来的にはゴルフを介護事業に取り入れられれば、とも考えています。
当社では、人材を随時募集しています。採用についても所長に任せていますが、応募者のほぼ全員に会うという所長もいます。会わないとわからないことも多いですからね。
介護の仕事は、技術や経験も大事ですが、最終的にはその人の人間性が大事。どんなに仕事が速くできる人でも、信頼できる人でなければ任せることはできません。逆に、仕事を覚えるのが遅かったとしても、人間的に信頼できる人なら、仕事を覚えた後はしっかりやってくれると思います。
何よりも「お年寄りが好きな人」「人間が好きな人」が向いています。人から感謝されて喜べる方、人のために仕事がしたいという方、ぜひお問い合わせください。