- 創業 昭和21年5月
- 設立 昭和36年1月
- 事業内容 印刷機械の製造・販売
- 資本金 9330万円
- 売上高 158億5300万円(2018年3月期)
- 従業員 132名(2018年4月現在)
- 本社住所 千葉県習志野市津田沼1-13-5
- URL https://miyakoshi.co.jp/
日本の印刷技術の高さは世界でもトップレベルだ。紙に高精細な画像を再現できるだけではない。さまざまな素材に転写したり、綴じる・折る・巻く・切り抜く・重ねる―といった複雑な工程を経て完成する多種多様な印刷物が、日々作成され私たちの身の回りに届いている。それを可能にしているのが、ミヤコシの生み出す印刷機械だ。日本のものづくりの最先端企業はいま何に取り組んでいるのか!? 代表取締役・宮腰亨社長と、管理本部長・山田茂取締役に話を聞いた。
少量×多品種×高品質に対応する高性能な印刷機を技術の力で作り出す!
当社は印刷機械を設計・製造して、印刷会社に販売しています。
私たちの周りには印刷物が溢れています。皆さんが手にしているこの本はもちろんですが、プラスチックの袋、食品の包装、お金(紙幣)、シャツの柄生地、テーブルの天板、ビルの外壁、ICチップ……等々すべて印刷機械が作り出している印刷物です。
ビジネスフォーム印刷機でトップシェア
そうした中で当社が特に強いのが「ビジネスフォーム」と言われる印刷物を作る機械で、業界トップシェアを誇っています。具体的には伝票や明細書などのシンプルなものから、圧着はがき、複写配送伝票、偽造防止カード、宝くじ、船券・馬券、窓付き封筒などです。
これだけ聞いても「ふーん」と思うだけかもしれませんが、たとえば複写式伝票(宅配便の伝票)を思い出してみてください。会社によって仕様は微妙に違うのですが、あれは7〜8枚の紙がセットになっています。
めくりやすいように幅が微妙に異なっており、一番最後はシールになっていて、左側が糊付けで綴じられ、切り離すためのミシン目と、ファイルするためのパンチ穴が入り、場合によってはレシートを差し挟めるポケットが付いています。しかも、各営業所に届くまでは上下に繋がっていて、プリンターで番号が印字できるよう、右側も綴じられミシン目が入っているのです。
こうした複雑な伝票が会社ごとに何種類もあって、しかもちょくちょく仕様が変わる。新聞・雑誌やチラシのように、まったく同じものを何十万〜何百万と刷るのであれば巨大な輪転機を超高速で回せばいいのですが、重ねて、折って、綴じて、切り抜いて……という複数の工程を経るものをある程度のロットで作るとなると、オーダーメイドの機械が必要になります。
ほかにも、複雑な形に折り込まれていたり返信用のはがきや封筒がついているもの、微妙な強度に糊付けされていて中にお知らせが印刷されているもの、一見すると一枚の用紙なのに一部違う素材になっているもの……等々、普段何気なく手にしている印刷物が、どんな工程で作られているか想像してみると面白いかもしれません。そして、そこには当社が作った印刷機械が関わっている可能性が高いです。
安全性の高い包材印刷機を第2の柱に
「ビジネスフォーム」専用機は当社の最も得意とする主力商品ですが、将来はデジタル化と電子媒体に置き換わり、少しずつ市場縮小してきています。そこで当社が「第2の柱」として力を入れているのがラベル/包材/生活産業資材の市場です。
たとえば、食品パッケージにフィルム製の袋が使われていますが、現状はほとんど「グラビア印刷」で作られています。雑誌の巻頭の写真ページを「グラビア」などと言うので、皆さんも耳にされたことがあるのではないでしょうか。この印刷方式は美しい色合いや微細な濃淡まで再現できるので、さまざまな印刷物に用いられていますが、金属に彫刻した筒状の版を作るのがとても高額なのと、インクに石油系溶剤を使うので臭いに問題があります。
当社はこれを「オフセット印刷」に置き換える機械を開発しました。グラビア印刷に比べて版が格安で作れるうえに、石油溶剤以外のインキも使えるので安全性に信頼がおけます。オフセット印刷も古くからある方式なのですが、平らな版を使うので、薄くて柔らかいフィルム状のものに印刷するには、適度なテンション(引っ張り)をかけ続けなければならない難しさがありました。当社はそこを技術力でクリアして、実現したわけです。
オフセットの機械はグラビアのそれに比べて小型で、小ロットの印刷に向いています。現在の印刷市場はまさに「小ロット」「多品種」に向かっているので、当社の機械がシェアを広げる伸びしろは相当にあり、発売以降多くの受注を獲得しています。
小ロット・多品種を武器に海外進出も着々
この印刷技術を武器に、海外市場進出も進めています。まずは「ワインラベル」に特化して、欧州市場に販売網を作りました。
ご存じのように欧州には巨大なワインの市場がありますが、各国・各地方のワイナリーがそれぞれ独自のブランドを持って、限られた本数を全世界に出荷するという独特の構造になっています。当社の得意とする「小ロット・多品種」がズバリあてはまる市場です。
また、消費者がワインを選ぶ際にはラベルが決め手になることが多く、意匠を凝らしたデザインで差別化したいというニーズが強くあります。ここでも当社の培った技術力が大きな強みになります。ワインラベル専用の印刷機を作るメーカーには、安さを売りにした中国勢と、注文から納品までの欧州勢等がありますが、当社は性能と故障しない信頼性で断トツの優位性があります。
ワインラベルを足掛かりに、今後はデジタルとアナログの営業部隊を投入して、さらなる市場の拡大を目指していきます。
また、アジアとアメリカでの販売網の充実も図ります。海外部門の拡充はまだまだこれからですし、当社は社員が若いうちからどんどん任せていく会社なので「世界を舞台に仕事をしたい」という人には大いに活躍のチャンスがあります。
納品して終わりではない―永続性を再重視する理由
印刷機械は毎日稼働して、大量の印刷物を作り続けています。万が一にも故障して停止してしまうようなことがあれば、当社のお客様(印刷会社)はもちろん、印刷物を発注したお客様にも大変な迷惑をかけてしまいます。
ですから、我々の仕事は機械を売っておしまいではありません。ミヤコシの機械がお客様の元にある限り、メンテナンスや消耗品を届ける仕事が続きます。当社には70年の歴史がありますが、ここまで会社が発展してきたのは、そうした信頼が一つ一つ積み上がってきた結果です。
そして我々はこれを次世代に引き継いでいかなければなりません。ミヤコシの100年に向けて共に会社を作っていってくれる若い人たちを求めています。
活躍する若手社員 ものづくりに携わる喜び 岡直人/営業本部国内事業部東日本営業部係長
私は新卒でミヤコシに入社して、現在9年目です。
ミヤコシの機械はすべてオーダーメイドです。お客様側から「こんなことができる機械が作れないか?」と相談をいただくこともあるのですが、逆にこちらから「当社の機械でしたらこんなことができます!」と提案することもあります。
それにはお客様のもとを訪ねコミュニケーションを取る中で、先方がどのようなお困りごとを抱えているのか、どうすれば効率化や利益増に貢献できるか、あるいは当社の技術で何ができるのか(自社製で対応する機械がなければほかの機械メーカーから調達します)を知っておかなくてはなりません。専門的な知識は営業を技術面でサポートしてくれる営業技術部の人たちの力を借ります。
機械の設計や製造にあたっては、お客様の要望を各部署に伝えながら、一つのチームとして作り上げていきます。そのためか、職場は非常に風通しがいいですし、上司にも何でも相談できる環境にあります。
そうして完成した機械を納入する日は感慨もひとしおなのですが、本当に大切なのはここからです。実際に使っていただき故障なく1年くらいが経過して、お客様から「やっぱりミヤコシの機械はいいな」と言ってもらえたときが一番嬉しい瞬間です。