【有馬芳香堂】子どもと地域の未来をつくる創業100年の老舗ナッツメーカーの挑戦

100年続くアリマの歩み

私たちは2021年に創業100年を迎えました。社名の「芳香」は、創業者の有馬嘉馨(よしか)の名前を現代字に置き換えたものです。第二次世界大戦中に一度廃業を余儀なくされたものの、終戦後に事業を再興し、その後も地道に商売を拡張してきました。

創業者が豆の販売を始めた理由の1つに、「豆は多くの人に分けることができ、多くの人を笑顔にできる」という想いがあります。「正直」「誠実」をモットーに「多くの人に笑顔を届けたい」という想いは、100年経った今も決して変わることはありません。

私たちは創業以来、豆菓子を中心に扱っている製造業です。豆やナッツの市場規模はそれほど大きくないですが、ナッツは聖書にも登場するくらいに、太古から多くの人たちに食べられてきた食材です。栄養価も高く、保存や運搬もしやすい豆類・ナッツ類は、食文化の流行や変化に流されずに、今後も長く安定需要が見込める素材として私たちの生活に寄り添う食べものであることは間違いありません。

現在は直営店に加え、全国130以上の小売店や量販店でも取り扱われていて、近年では海外市場にも参入しました。2021年春にはハラール認証(イスラム教の教えに則り、豚肉や酒などを使わず、安全に食べることができる食材を表すもの)を取得した商品をマレーシアの主要小売店で販売開始。イスラム市場への本格参入に合わせて、自社工場内で製造する製品の全商品ハラール認証取得へと動き出しています。

なかでも当社が重点を置いているのが、マレーシア市場です。マレーシアは英語圏の国で、東南アジアのハブでもあるため、ハラール市場の中心地とされています。2021年1月からマレーシアの主要小売店にて販売を開始し、今後はシンガポールやインドネシアなどのイスラム商圏参入を目指していく予定です。

1941年の出兵時に撮影した集合写真

地域とつながる取り組みでSDGsを推進

兵庫で育てられた恩返しとして、地元を中心とする持続可能な地域づくりにも力を入れています。例えば、地元の生産者の方々と協力して地産地消に向けた取り組みや、近年問題になっているフードロス削減にも貢献しています。

こうした地域の特性を活かして付加価値を創出し、地域の経済成長を牽引する事業が高く評価され、2018年には「地域未来牽引企業」に認定されました。こちらは、経済産業省から地域経済の中心的な担い手となる事業者に選定された証です。

地域のみなさまをはじめ、一人でも多くの人を笑顔にするために事業を行ってきた取り組みが認められたことは、スタッフの働きがいにもつながっています。

2021年1月には、神戸元町六丁目商店街と移動式マルシェを展開しているモビマル社と元町6丁目商店街と協働し、節分に合わせた企画「Fuku wa Uchi」を開催しました。

このイベントには、「色々な人々のつながり〝wa=輪〟で、新しい豆まきを発信し、神戸に〝Fuku=幸福〟を呼び込む」という意味を込めました。豆まきは約500年前から「疫病退散」を目的とした行事ですが、コロナ禍だからこそ健康を祈願して、今までにない豆まきを発信し、神戸の街を盛り上げるために開催しました。今後は神戸各地で食関連のイベントを実施し、さらに活気ある街にしていきたいと考えています。

私たちと地域とのつながりはほかにもあります。2021年4月には創業の地に、ナッツスイーツ専門店と商品開発研究所「NUTS LAB(ナッツラボ)」をオープンしました。

ここでは、常識にとらわれることなく美味しい・楽しいを体験できる場所をコンセプトにしています。新鮮な食べものをお客様へ届けるために、自社で製造したナッツを工場から店舗へ直送しています。看板メニューの「木の実シュー」の器には、本来は破棄されてきた間伐材を有効活用した六甲山の間伐材を使用しています。

NUTS LABの商品開発研究所の様子

また、地元の神戸市立王子動物園とも協業しています。コロナ禍で気軽に外出ができない地域の方々にも、当社の商品を通して喜んでもらいたいという想いで、お子さま向けに世界に1つだけのお土産を作れるコラボイベントや、パンダのタンタンをモチーフにした商品の開発・販売を行いました。

安全で快適に暮らせるまちづくりを目指し、学校との協力も行っています。例えば、子どもたちの社会教育と地域活性化を兼ねて、休耕田を活用して地元の小学生とともに落花生の栽培をしたこともあります。農業の大変さと喜びを体験しながら、普段食べている商品がどのように作られているかを知る体験学習として、学校関係者からも喜ばれました。

次世代とのつながりを深め、若者たちにとって魅力ある企業として地域にあり続けるために、地元の大学や専門学校とのコラボも行っています。

兵庫県の特産品を使用することで、地域の食材を知ると共に地元企業への興味・関心をもってほしいと2020年10月に神戸国際調理製菓専門学校の学生を対象に、百貨店などで洋菓子を展開するSHOTANIとコラボゼミを企画しました。ゼミは数回に分けて行い、学生が試作したものを試食するだけでなく、学生自らがプレゼンテーションを行い、私たちはそれに対してフィードバックを行いました。最後のゼミでは商品化する作品を選ぶためにプレゼンテーションが行われましたが、どの作品も素晴らしいものでした。最終的に選ばれた3つの作品は、実際に大丸神戸店のケーキハウスショウタニで販売しました。

2021年には、兵庫県立大学とのプロジェクトゼミもスタート。地域課題の解決や活性化につながる新商品のアイデアを学生からプレゼンしてもらい、その中から実際に商品化するものを選定し、ショッピングモールの敷地内にキッチンカーを出店し、販売しました。

神戸国際調理製菓専門学校の学生と試作した焼き菓子

日本の農家を守り、次の100年へ

地方の小さなメーカーである当社が豆類・ナッツ類の商品を作り続けていくためには、信頼できる生産者の存在も欠かせません。コロナ禍により、生産者との対面でのコミュニケーションは難しくなってしまいましたが、コロナ以前は国内の落花生農家だけでなく、カリフォルニアのアーモンドやクルミ農家、インドのカシューナッツ農家、中国などの生産者のもとへ頻繁に足を運んでいました。

豆菓子は作り方がシンプルな分、ごまかしのきかない食べものです。当社が努力すれば、美味しくて安心・安全な商品を作ることはできても、素材の良さと鮮度は生産者やサプライチェーンのみなさまの協力なしでは維持できません。だからこそ、メーカー1社だけに留まらず、さまざまな関係者との連携が欠かせないのです。

鹿児島県喜界島のそら豆生産者とのコラボでは、「地元のそら豆を通じて、地域に貢献したい」という生産者の田向さんの考えに共感し、当社と杉原産業を加えた3社の協業で商品開発が始まりました。これは「豆を通じて地域に貢献する」当社の考えともマッチした取り組みになりました。2018年からは看板商品の「いかり豆」と共に、喜界島のそら豆を使用した「国産いかり豆」を販売しています。

2022年から本格的にスタートしようとしているのは、フードロス削減と生産者支援につながる取り組みです。例えばタオルなどを作る繊維メーカーの内野株式会社との協業で、落花生の薄皮を染料として使用した「落花生染め」の商品開発を進めています。

このように、当社は今後も継続的に産業廃棄物削減に貢献し、食品ロスを念頭に置いた取り組みを実施していきます。一方、内野株式会社も今後は食品ロス削減と人的・自然への負荷を考慮した取り組みを進めていくとしています。こうした協業先と目線を合わせながら、一緒に環境に配慮したものづくりを行っていきます。

私たちが目指しているのは、「次の100年」に向けた活動です。大豆の花言葉には「可能性は無限大」「必ずくる幸せ」といった意味があるといいます。100年間もの間、私たちに笑顔と幸せを届け続けてきた信頼と技術で、これからの100年も地域と地球の幸せを願い、挑戦を続けていきます。

そのためには、新しい視点をもったデジタルネイティブ世代のみなさんの力が必要です。近年はECサイトにも力を入れていますが、改善の余地はまだ多くあります。SNSなどを使った情報発信も、これから強化しなければならないところです。スタッフだけでなく、地域のみなさん、これから当社の仲間入りをする人たちとともにグローバルなチャレンジをしていくことが、私たちの次の目標です。

当社がこれまで100年間事業を続けてこられたのは、「1人でも多くの人に笑顔を届けたい」という思いを大切にし、ワクワクしながら新しいことへの挑戦を続けてきたからだと思います。「挑戦」を続けてきた当社では、社員のやる気といチャレンジ力を何より大切にしています。これからも「次の100年」に向けて、共に「ワクワク」を忘れずに仕事をしていきたいところです。

有馬芳香堂はこんな会社!

「ピーナッツ薄皮染タオル」プロジェクトについてお話をうかがいました

三方よしの商品開発を

このプロジャクトを始めた経緯は、ある繊維会社から「これまで捨ててきたナッツを使用し、繊維を染めることはできないか」というお声がけからでした。環境だけでなく、お客様にとっても新しい価値を提供したい、そんな強い思いが感じられ、共同開発がスタートしました。

SDGsのタネは、小さな貢献意識から

これまで私たちが廃棄していた落花生の薄皮の廃棄量は、月におよそ数kgほどにすぎません。廃棄量としてはそこまで多くないかもしれませんが、食品を取り扱うメーカーとして、少しでもフードロス削減に貢献していきたい思いも、このプロジェクトには重なり合っています。

ピーナッツ薄皮染タオルのおすすめポイント

ピーナッツの薄皮を染料として使うメリットは2つあります。
①化学染料と比べて、人的・自然への負荷が少なくなる
②これまでロスになっていた薄皮に「付加価値」をつけられる
私たちが普段使うタオルも、どう作られているのかに目を向けてみれば、その見え方も変わるかもしれません。

株式会社有馬芳香堂
取材日:2021年9月9日
代表取締役社長:有馬英一
設立:1950年5月(昭和25年5月)
事業内容:各種豆類ナッツ類落花生加工、菓子一般食品・珍味類販売

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